「南武線スマホ紛失」海外の発見者は人生激変 日本とジャカルタの懸け橋としてTV出演も
また、形式もKCJ側の希望どおりのものが入手できるとは限らない。たとえば、直近でKCJへ導入された日本からの車両は205系の追加ではなく、1969年製の東京メトロ千代田線の2次試作車「6101F」編成だった。車両年齢は“47歳”。つい先頃まで、東京メトロで走る「最も古い車両」だった。現在も天井で扇風機が回っている。
これは日本製の車両の耐久性の高さを示しており、すばらしいことだ。車両を長持ちさせながら使うことも、倹約の精神や廃棄物の低減を考えれば好ましいことに違いない。しかし、より新しい車両のほうが省エネ型であったり、走行性能がよかったりするということも事実だ。
それに加えて、インドネシア政府が「鉄道用車両を含む、中古輸送機器の輸入規制」をかけようとする動きもある。背景には自国産業の保護育成という狙いが垣間見えるが、「残念ながら、インドネシアの鉄道車両メーカーの技術水準はまだ十分ではありません。インドネシア製の車両をKCJでもごく一部で使っているのですが、空調まわりのメンテナンスが面倒で使いこなすのが難しい。なので、当分の間、日本のどこかの会社から譲ってもらうしかないのです」とオマットさんは話す。
KCJの現場技師たちの間でいちばん欲しい車両は「新品の205系」だという。なぜなら、これまでに205系のメンテナンスやメカニックについて細かく学んできた一方、色々な種類の車両が混在すると対応が大変だから、なのだそうだ。
だが残念ながら、日本では現在、205系の新造は行なわれていない。
「東京に行ったとき、山手線でE231系にも乗ったけど、あんなハイテク車両は僕たちには使いこなせない。ましてや、E235系なんてとんでもない」(オマットさん)。
日本流の運行管理は道半ば
鉄道の安全輸送を支えるもう1つの柱、運行システムのほうでは、「スマホ事件」以降、変化があっただろうか。
KCJの駅のホームで電車を待つ利用客の目に入る情報は、「この次にホームに入ってくる電車はどこ行きで、いまどの駅あたりを走っているか」というものだ。安定運行に向けた努力は続けられているものの、正確な日本の運行を見慣れている日本人の目には「一定しない間隔で電車が走っている感じ(ジャカルタ在住日本人男性)」と映る。車両の「質」はずいぶんよくなったが、運行管理という点では道半ばのようだ。
それでも、「日本の鉄道事業者のノウハウを参考にして、始業検査のチームを1日2交代から夜勤組を入れた3交代にして、メンテナンスの強化や、方法そのものを改善した結果、車両故障が格段に減り、電車が立ち往生することが少なくなった」とオマットさんは説明する。
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