対北朝鮮の「敵基地攻撃論」には実効性がない

安倍政権下の自民党内でにわかに勢いづくも

しかし、すでに述べたように敵基地攻撃能力は万能ではない。時代はさかのぼるが1991年の湾岸戦争や2003年のイラク戦争で、イラクは保有するスカッドミサイルを米軍や敵対するサウジアラビア、イスラエルなどに向けて発射した。これに対し米軍は戦闘機や巡航ミサイルでスカッドミサイルのロケットランチャー(発射台)を徹底的に攻撃した。これは自民党の言う「敵基地攻撃」に該当する。

米軍はイラクのロケットランチャーの多くを破壊することに成功したし、攻撃を繰り返すことでスカッドミサイルの発射を抑止する効果も生んだ。しかし、移動式のランチャーが多かったためすべてを破壊することはできなかった。また破壊したものの中にはデコイ(本物に似せて作った偽物の発射台)が多く含まれ、誤爆も多かったという。その結果、イラクは戦争中、破壊を免れたスカッドミサイルを発射し続けた。

基地の攻撃に成功しても必ず報復を受ける

北朝鮮はイラク以上に技術が進んでいる。トレーラーに積む移動式はもちろん、地下トンネルを使ったミサイルの移動も行っているといわれている。そして、SLBMの登場である。そのため衛星を使った弾道ミサイル基地の発見は極めて困難になっている。このことは日本が仮に北朝鮮のいくつかの基地の攻撃に成功したとしても、必ず報復攻撃を受けるということを意味している。

また、日本が自己完結的に敵基地攻撃能力を持つためには、偵察衛星、無人偵察機、巡航ミサイルの導入とそれらを運用するための部隊の創設など新たな装備や組織の創設、実際に動かすまでの訓練の実施などが必要で、費用からしてもGDP(国内総生産)の2倍に当たる1000兆円を超える長期累積債務を抱える日本が財政的に対応できるか疑問である。

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