伊豆急「1両だけで走る旧型電車」復活の狙い 観光客の人気呼ぶ開業時からの「クモハ103」

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当初はなかなか集客に結びつかなかったというこのツアー企画だが、認知度が高まってからは、毎回ほぼ満席の状況だという。

「このツアーの今年4月以降の計画は今のところ未定なのですが、追って社内で検討されることになります。この列車の運転に際しては、地元のハーブガーデンの生産者さんに列車に乗って頂いて、車内でお話を頂くなどの趣向を凝らしています」

今後のクモハ103の運転について、比企さんは「これからも可能な限り続ける予定でおります。ただし、それをどのような企画で運転するのかについては、先ほどのツアーとしての運転と同じように、これから社内で打ち合わせを行って詳細を詰めてゆくことになります」という。

地域活性化・集客環境づくりの中心に

では、1両のみという輸送力の限られた電車での企画を続ける鍵とは、どこにあるのだろうか。比企さんはいう。

「私どもがクモハ103を復活させたのは、まず集客力を見込んだということ。それから、この電車が、走行関連機器、電気品などに今日のものとしては古いシステムを採用しており、これを保守、管理することが、現場スタッフの技術を高め、次世代への技術の伝承を可能にすると考えられたからでした」

さらに比企さんは、クモハ103復活運転がもたらす地域への効果についてこう語る。

伊豆半島の自然の中を1両で駆け抜けるクモハ103(写真提供:伊豆急行)

「クモハ103を主役に据えてのイベントを開催するにあたって私たちが心していることは、単に電車1両を動かして集客すればよいというのではなく、運転を通じて、地元の人たちが自らの手で地域活性化の方策を見出し、積極的に行動するようになれば良いということです。クモハ103の運転は、あくまでもそのための一助であるという考え方です。いちばん大切なことは、地元の方が能動的に行動するようになること。私たち鉄道会社は、そのための環境づくりをすることが仕事であり、その中心に位置しているのが、クモハ103であるということです」

クモハ103が復活を果たしたとき、いちばん喜んだのは、昔を知るオールドファンではなく、100系が健在だった時代を本でしか知らなかった若い層であったという。鉄道車両には時代、世代を超えて、多くの人に鉄道の魅力とは何かということを語りかける、強い力が宿っている。クモハ103の活躍は、これからも続くことだろう。

池口 英司 鉄道ライター、カメラマン

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いけぐち・えいじ / Eiji Ikeguchi

1956年東京都生まれ。日本大学藝術学部写真学科卒業後、出版社勤務を経て独立。著書に『国鉄のスピード史―スピードアップがもたらした未来への足跡』(イカロス出版)、『鉄道時計ものがたり―いつの時代も鉄道員の“相棒”』(共著、交通新聞社新書)、『JR旅客6社徹底比較』(河出書房新社)、『さらに残念な鉄道車両たち』(イカロス出版)等。

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