業界4位「どろんこ保育園」 新規開園の"真実"は

認可手続きで「他園から一時的に搬入した備品」による是正報告書を提出

社会福祉法人どろんこ会に関する記事の一部の削除・訂正について

本記事は、「業界4位『どろんこ保育園』の“不都合な真実”―『偽装工作』で認可を取得していたことが判明」との見出しで、社会福祉法人どろんこ会について、新規開園の設置認可取得の手続における問題点、保育の問題点、現場の過重労働、園児に事故が起きたときの不誠実な対応などを指摘したものでしたが、見出しを含め、事実と異なる部分がありましたので、その部分を削除・訂正しました。

株式会社東洋経済新報社

【2020年10月21日7時50分追記】裁判所の判決に基づき、訂正文を掲載いたしました。また、裁判所の事実認定を踏まえた加筆修正を行っています。

「保育園落ちた日本死ね!!!」のブログが象徴するように、保育園不足は今や深刻な社会問題だ。共働き家庭は、死にものぐるいで「保活」をし、自治体は保育園の増設に追われている。

保育業界第4位の「どろんこ保育園」。その実態をリポートする。

田植えや稲刈り、ヤギや鶏の世話を通して、自然にふれあい生命の大切さに気づく。食育活動では子どもたち自身がおだんごやケチャップなどを作っている――。ホームページを見ると、保護者が「わが子に経験させてやりたい」と思いながらも、都会生活ではなかなか味わえない活動の数々が、写真入りで紹介されている。

社会福祉法人どろんこ会(東京・渋谷区)。「にんげん力を育てる」を理念としてかかげ、東日本を中心に展開する50以上の保育施設をはじめ、関連法人を含めれば100近い事業所を運営している。従業員数は1515人(2017年3月1日現在)にのぼる、業界第4位の大手だ。2015年度ごろから事業規模を急拡大させ、最近では年間で10園近く新規開園する年もある。

自身の子育て経験をもとに1998年に保育園を開設し2007年にどろんこ会を立ち上げた女性理事長は、カリスマ経営者としても知られている。メディアへの露出や講演などにも積極的だ。その効果もあってか、わが子を入園させようとする保護者、そして保育士たちからの人気も高い。まさに、”理想的な保育園”といえるかもしれない。

だが、法人の教育理念に共感して就職した保育士たちの中には、「自分が抱いていたイメージと違う」と入社後数週間で退職した人も少なくない。

「他園から一時的に搬入した備品」で都へ是正報告

どろんこ会が2016年4月に開設した「武蔵野どろんこ保育園」では、開園の際に都から設備の不備を指導されており、是正が求められていた。たとえば、事務所に薬品箱が設置されていない、2階の廊下に転落防止のための柵が取り付けられていない、外階段への侵入防止のためのチェーンがかけられていないなど、指摘は全10項目にも及ぶ。

「他園からの一時的な搬入」を裏付けるメール(編集部撮影)

不備が指摘されても、すみやかに是正すればそれでいい。だが、都からの指摘に対して、実際にはどのような対応がとられたのか。

「お疲れ様です。武蔵野どろんこの指摘事項対応ですが、清瀬などの周辺保育室から医務室関連物品、及び稼動間仕切り(原文ママ、可動間仕切りの間違いと思われる)を借りて、武蔵野どろんこに運び、写真をとり、(個人名)さんからの是正報告書に追記しておいてください」

これは、筆者が入手した法人幹部から本部職員向けに送られた業務命令メール(2016年2月16日付)の一部である。同日に送られた別の職員からのメールには、「是正を行った修正後の写真は22日(月)が東京都への最終期限となるようです。ここに間に合わなければ認可が受けられないとの事、宜しくお願い致します」ともある。

このようなやりとりを経て、どろんこ会が都に提出した是正報告書についても、筆者が取材過程において入手している。本記事内の画像は是正報告書の一部だ。

不備を指摘された階段からの転落防止用「可動間仕切り」は、写真を撮るために周辺の保育室から一時的に搬入された。その後、もとあった園に戻されたという(編集部撮影)

工種に「2階廊下 転落防止処置」とあり、撮影部位には「転落防止処置前」「転落防止処置後」とある。「処置後」の階段入り口には小さな柵が置かれているように見える。これが前述の法人幹部のメールにある、可動間仕切りを指しているようだ。

「武蔵野どろんこ保育園」のケースでは、周辺保育室から一時的に搬入された可動間仕切りを写真撮影して作成された是正報告書が提出されたのだ。

都から認可は得られたが…

2016年4月に「武蔵野どろんこ保育園」は開園された。

訂正前の本記事掲載後の2017年3月28日、東京都が児童福祉法第46条に基づき、「武蔵野どろんこ保育園」へ特別指導検査を行った。東京都はこの特別指導検査の結果、本記事で触れた「是正報告書」の内容のうち、4点に関して実際の保育園の状況と異なるとして、どろんこ会にその理由と対応策を書面で報告するよう求めた。

これに対して、どろんこ会は、同年4月24日付で都に向けて「一時保育を実施しなくなったため、転落防止柵は不要となった」「是正報告書の提出期限までに備品納入が間に合わなかったために他園の余剰品を使って是正報告書を作成し提出したが、その後、予定通り納品され、都が求めている機能は充たしている」と回答した。

「他園から一時的に搬入した備品」の写真によって認可が取り消されたわけではなく、どろんこ会は事後に東京都に対して認可が変わらないことを確認し、「武蔵野どろんこ保育園」の運営はその後も続いている。

ここで一般的な保育園の認可プロセスについて説明する。

都の認可基準を示したものとして、「東京都児童福祉施設の設備及び運営の基準に関する条例」がある。そして、都の認可基準における保育園設備の一般原則はこのように謳われている。

<第五条第三項:児童福祉施設は、法に定めるそれぞれの施設の目的を達成するために必要な設備を設けるとともに、採光、換気その他の入所者の保健衛生及び入所者に対する危害防止に十分考慮した構造設備を設けなければならない。>

ここでいう「児童福祉施設」は「保育園」に、「入所者」は「保育園児」に読み替えていただければわかりやすくなる。

つまり自治体は、保育園に預けられる子どもの「保健衛生」や「危険防止」を考慮する観点から認可基準を定め、実地確認を行い、指摘すべき点は指摘する。その後は是正報告が適切になされていることをもって保育園の認可を行う。これが本来あるべき姿であると考えられる。

今回の「武蔵野どろんこ保育園」における一連のやりとりは、このような認可基準の趣旨に照らして適切なものだったのか。

どろんこ会は、前述の都に向けた回答書の中で、「暫定措置としての中古備品である旨を是正報告書に明記し、新規備品納入後にあらためて報告することが望ましかった」とも回答している。

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