日本の”頭がいい人”に、一番足りないもの テラモーターズ徳重社長、イノベーションを語る(上)
若いときに失敗すれば、失敗は怖くなくなる
ところがここで挫折があって、僕はスタンフォードかUCバークレーに通るだろうと思っていたのに落ちてしまった。留学先の学校も決まってないのに「シリコンバレーで勝負するんだ」と、たんかを切って会社を辞めて、6カ月ぐらい勉強したのに。だから本当に格好悪かった。
「ターミネーター2」という映画を見たことがある人はわかるでしょうけど、ターミネーターは液体樹脂を流して固めた人造人間で、銃で撃たれたらバラバラになるんですよ。そのときの僕もそんな感じでした。
それでせっかく辞めたのに、今さらアリコジャパンとか、外資系の生保に行くのも格好つかない。しょうがないからアメリカに行くしかない。そこでアリゾナにあるサンダーバード大学というMBAがとれる大学へ行った。
でも後から思えば、それがすごくよかった。インテリジェントで頭のいい方にいちばん足りないのはエネルギーなんですね。昔の起業家はだいたい学歴がないか、貧乏か、女の子にもてないかのどれかで、でもそれがエネルギーになる。何かを突破するときには、これが大事なんですよ。そのためにも、失敗するというのは重要です。
ちょっと話が飛びますが、僕が日本でいちばん問題だと思うのは、チャレンジができないことです。イノベーションはチャレンジしないと起こりえるわけがない。チャレンジするということは難しいことをやるわけですが、それは当然、成功するパターンもあれば、失敗するパターンもある。
でも大きな失敗がすごくプラスになって、「それがあったおかげで今がある」みたいなケースばかりなんですよ。若いときから失敗を経験しておけば、失敗することは全然怖くないのです。立ち直れないような失敗はいけませんけど、小さい失敗とか、立ち直れる失敗っていうのはいくらでもしていい。それは軌道修正だと思えばいいのです。
海外と日本では反応がまったく違う
経歴に話を戻すと、その後、僕はシリコンバレーに行き、技術系のベンチャーの立ち上げ支援を5年半ぐらいやりました。
それから帰ってきて、EV(電気自動車)の中でも、電気スクーターや電気3輪の会社を3年半前に立ち上げて、今に至ります。
僕たちの会社の価値が100だったとします。でも残念ながら日本にいると30にしか見てもらえない。ベンチャー企業だし、ホンダとかヤマハとかと比べると、「お前ら、アホじゃない?」みたいに思われる。
だけどこれが台湾やベトナム、インドに行ったりすると、僕たちの価値は300とか400に跳ね上がる。それはお客さんと話をしていると反応が圧倒的に違うので、その肌感覚なんですけど。