なぜ日本の駅前広場は「噴水だらけ」なのか 公的空間のまったく新しい利用法とは?

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木下:官民連携でやるとしても、ペデストリアンデッキや駅前広場は、法律上は「道路」という扱いなんですよね。つまり民間からすると何もできない場所。そこに開発する企業として力を入れろと言っても難しい。ペデストリアンデッキや駅前広場をもっと用途なども変更して、より簡易に使えるようになるという前提にしないと、本気の官民連携は実現しないと思いますよ。

野尻:駅前広場の使用というのはそんなに規制が厳しいんですか?

自治体の首長がヤル気になれば日本の広場が変わる

――たとえば東京都港区の新橋駅前のSL広場では、定期的に古本市が開催されていますが、港区のホームページにある「よくある質問」のコーナーを見ると、「SL広場でイベントを行いたいのですが」という質問に対し、「SL広場は広場状に整備してありますが、実際には道路法上の道路です。このため道路上におけるイベントは、区の事業、地元商店会、町会等の行事以外は営利、非営利を問わず一切許可ができないことになります」という回答が記載されています。つまり「原則イベント使用は不可能」で、古本市については地元のニュー新橋ビルが主催し、港区が後援をするということで開催が可能になっているということです。

新橋駅前のSL広場。実は規定上は道路の扱い。規制で使い方を制限しなければ、いろいろなビジネスチャンスがある(写真:7maru / PIXTA)

野尻:こういう縛りが突破できないから行政のほうも困っているし、われわれ民間や一般の方も何をここでやっていいのかわからなくなってしまっているんですよね。

木下:法律上の扱いが、実態と乖離している点が問題なんです。ペデストリアンデッキも法律上は道路の扱い。道路管理者の国や自治体としては利活用する一定の目的や公益性が必要になるし、一方で交通行政を担う警察から見たら、管理しなければならない安全面を含めてしっかり対象になるんです。道路というものは、国や自治体と警察が共同管理する複雑な仕組みなのです。だから本当に利活用を推進するためには、広場やペデストリアンデッキは「道路」とは別の用途にすることなんです。

木下 斉(きのした ひとし)/一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス 代表理事。1982年東京生まれ。高校在学中に全国商店街合同出資会社の社長就任。一橋大学大学院商学研究科修士課程在学中に経済産業研究所、東京財団などで地域政策系の調査研究業務に従事。2007年熊本城東マネジメント株式会社を皮切りに、全国各地で「まち会社」へ投資、設立支援を開始。2009年、全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス設立。内閣官房地域活性化伝道師なども務める

野尻:でもSL広場の使用許可を出すのが港区だとしたら、区が条例を変えれば使用しやすくなるんじゃないの?

馬場:実は、道路交通法の規制がある道路についてはまだ壁が高いのですが、都市公園法が絡む公園については規制緩和が進んでいて、かなりいろんなことができるようになっているんです。国交省の人と話をしてみると、「国はやるべきことをやろうとしている。メッセージも出している。あとは自治体が条例を外していくだけだ」と言います。

木下:私がかかわる新たな施設に付帯する空間については、「公園」とか「道路」といった法律で厳しく縛られた用途ではなく、ただの「広場」というように法律も条例もほとんどない用途で指定したりします。こうすれば、行政側が過剰な責任を負うこともなく、管理に関するコストも低減でき、利活用は実態に即して柔軟になります。ただ、既存の施設の用途を変更したりする作業というのは、緊急性がないだけに自治体でもなかなか進まないんですよね。

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