米国株の「バブル」はどこまで続くのか 2017年では終わらず、長期化する可能性

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今後、FRBはトランプ政権の経済政策などの影響も見極めながら、慎重に利上げを進めるだろう。また、債券などの購入を通じて金融市場に資金を供給する量的緩和で4兆4000億ドル規模に膨らんだ保有資産の圧縮策についても、別途検討が重ねられるだろう。しかし、市場にショックを与えるような行動をとるとは考えにくい。結果的に市場に対してフレンドリーな政策が、米国株の上昇を後押しすることになりそうだ。

シラー教授の「CAPEレシオ」は有効か

一方で、「現在の米国株の水準は割高」との見方は依然として多い。その根拠として示されるのが、ノーベル経済学賞を受賞した、米国のロバート・シラー教授の説である。シラー氏は「根拠なき熱狂」という著作を出版し、過熱した株式市場の崩壊を指摘し、2000年のITバブルの崩壊を的中させたことでも知られている。そのシラー氏が独自に計算しているのが、「CAPEレシオ」と呼ばれる株価収益率である。

筆者はこの指標を常に確認するようにしているが、現時点では約30倍にまで上昇している。これは、リーマンショックが起きた2008年の前年の2007年5月につけた27.55倍を超えており、きわめて高い水準である。つまり、過去との比較において、米国株は割高に買われているとの説明が可能だ。その前の高い水準となると、2000年のITバブル崩壊直前の1999年12月の44.20倍がピークである。また、それに次ぐ高水準だったのは、1929年10月の32.56倍だが、この時に起きたのが世界恐慌である。

つまり、現在の水準は、過去の株価大暴落が起きた際の水準にきわめて近いということである。この点だけを考慮すれば、「米国株は売り」となるのだが、実際にはこのような状況になっても株価は上昇し続けている。米国株を割高と判断し、空売りを仕掛けていた一部のヘッジファンドが、いよいよ耐え切れなくなり、買戻しを始めたことが株価上昇につながったとの指摘もあるが、いずれにしても、現状で米国株が暴落するような雰囲気は感じられない。もちろん、そのような兆候がない中で急激に下げ始める可能性はゼロではないのだが、いまは、多くの投資家が「今はまだそのような段階ではない」と考えているようだ。

その根拠は、いくつか存在する。現在、米国の代表的な指標であるS&P500の株価収益率(PER)は18倍と試算されるが、ITバブル時には最大で25倍程度にまで買われていた。また、ナスダック総合指数のPERは現在24倍程度とみられているが、ITバブル時には65倍にまで株価は買われている。

ITバブル時の水準はまさに熱狂の中で買われた異常値だとしても、現在の水準は「異常に」割高とはいえない。S&P500採用企業の今後の収益に関しても、2017年が前年比11%増、2018年も同12%増との見方がある。もしこうした予想が正しいとして、PERが不変なら、S&P500は現在の2385から2018年末には2940前後にまで上昇する可能性がある。逆に株価の上昇が抑えられれば、PERは低下することになり、現在の割高に見えるPERは将来的に正当化される可能性もある。

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