あいりん地区で「孤立死」が日常化する意味

例外的な地域と見なす考えは時代遅れだ

この十数年の間に西成区およびあいりん地区では社会的孤立・孤立死が深刻化しているにもかかわらず、その解決に向けた取り組みはほとんど見られなかったが、近年ようやく対策が講じられるようになっている。

地域における見守り活動

西成区全域の動きとしては、「地域における要援護者の見守りネットワーク強化事業」が挙げられる。この事業は、地域における見守り活動や孤立死のリスクの高い世帯へのアプローチに向けて、行政と地域が保有する要援護者情報の集約・活用を目的に2015年度から大阪市内にある各区の社会福祉協議会で始められたものだ。

同事業は(1)「要援護者情報」の整備・管理、(2)孤立世帯等への専門的対応、(3)認知症高齢者等の行方不明時の早期発見、の3つの機能を備える。これらのなかで社会的孤立・孤立死にかかわりの深いのが(1)と(2)だ。

(1)は行政が要援護者(高齢者・障がい者など)をリストアップし、対象者の同意に基づき、地域(民生委員、ネットワーク委員など)での見守りを行う。(2)はセルフネグレクト(ゴミ屋敷で暮らす者や医療を拒否する者など)や孤立死リスクの高い世帯(社会福祉サービスを受けていない独居高齢者など)といった支援困難事例に福祉専門職のワーカーが対応する仕組みだ。

炊き出しに並ぶ人々。あいりん地区には身寄りがなく高齢期を過ごす者が多い

都市の高齢者政策を研究する社会福祉学者の黒岩亮子氏は、孤立死(原文では孤独死)のリスクが高い人は低収入や疾患など、複雑な問題を抱えていることから、地域住民の活動には限界があり、専門職がかかわる必要を指摘している。

黒岩氏は行政責任の下で専門職と地域住民と連携することが孤独死対策に必要だと述べているが、「地域における要援護者の見守りネットワーク強化事業」はまさにこうした観点とぴったりと重なる。

同事業は各区の課題や特性に応じてカスタマイズできる仕組みになっており、西成区では西成区社会福祉協議会に設置された「見守り相談室」と4つの地域包括支援センターに配属されたコミュニティソーシャルワーカー(見守り支援ネットワーカー)を中心に活動が展開されている。2016年の時点では、支援対象者への関与が始められたばかりであり、その効果は限定的だが、今後の展開が大いに期待される事業といえるだろう。

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