あいりん地区で「孤立死」が日常化する意味

例外的な地域と見なす考えは時代遅れだ

では、直近でどれくらいの数の孤立死が発生しているのだろうか。あいりん地区の孤立死件数を示す公式のデータが存在しないため、西成区の生活保護受給者の火葬件数と西成警察署が扱う異状死体数から推測してみよう。

無縁仏の遺骨を納める大阪市設南霊園の無縁堂。あいりん地区の人々の遺骨も多い

2015年度の大阪市の生活保護受給者の火葬件数は3914件。そのうち西成区は1220件。全体の約30%を占めており、他区を圧倒している(西成区に次いで火葬件数が多い平野区は264件。最も火葬件数が少ない福島区は22件)。あいりん地区の生活保護受給者は西成区の3分の1程度を占めるため、単純計算すると1年間に約400人が死亡することになる。もちろん、彼らが皆、在宅死するわけではないので、孤立死の発生件数はもう少し低く見積もる必要があるだろう。

より孤立死の発生件数に近いデータとみなしうるのが、警察署が取り扱う異状死体数である。異状死体とは亡くなった時点で死因が不明なものを指し、一般的に在宅死が多数を占める。あいりん地区のように住民の大半が親族関係の希薄な単独世帯の場合、在宅死の多くは孤立死に位置づけられよう。

高齢者の在宅死の急増

あいりん地区にある支援団体「ふるさとの家」の納骨堂。約160体の遺骨が納められている

著者が大阪府警に請求して入手した統計データによると、あいりん地区を管轄する西成警察署が取り扱う異状死体数は2002年から2014年にかけて年間600人前後で推移している。近年、路上死するケースが激減していることから、異状死体の大半は在宅死(自殺を含む)だと考えてよいだろう。なお、大阪府には65の警察署があるが、この十数年のデータを見るかぎり、一貫して西成警察署の取り扱う異状死体数が最多となっており、その数は他署を圧倒している。

西成警察署が取り扱う異状死体で注目すべきは、そのなかに占める高齢者割合(65歳以上)である。2002年に49.0%(275件)だったものが、2006年には63.8%(363件)、2010年には67.1%(456件)、2014年には69.0%(390件)に上昇している。このことは高齢者の在宅死の急増を示している。西成警察署が取り扱う異状死体のうち、あいりん地区での発生件数を特定できないが、相当の割合を占めることは間違いないだろう。

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