下限はGDP7%増? 中国構造転換の隘路 成長率の急減速は回避したが、難局はこれから

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カギを握る雇用の維持

貿易統計やGDPの発表に先立ち、李克強首相は、「経済成長や雇用水準が“下限”を下回らないようにし、合理的な範囲で構造調整や改革促進に力を入れる」と表明している。見方を変えると、許容範囲を逸脱すれば対策に動く、とも考えられる。

ただ、政府が出している目標数値は、13年の成長率「7.5%前後」だけ。どこまでが成長鈍化の許容範囲なのかは不明で、市場関係者の間でさまざまな憶測を呼んでいる。

ニッセイ基礎研究所の三尾幸吉郎上席研究員は、成長率の下限を7%と見ている。「今後の景気対策を占ううえでは雇用もカギを握る。現状、都市部の求人倍率は1倍超。雇用不安が生じない形で経済成長が持続できるかどうかがポイント」と話す。

複数のエコノミスト予想を総合すると、成長鈍化の許容範囲は7%前後。13年の上半期こそ内需の底堅さにも支えられ、7.6%の成長率で折り返した。しかし、輸出の減少やシャドーバンキング規制に伴う信用収縮で、下半期の成長率はさらに低下する可能性もある。

来年の成長鈍化を織り込む動きも出てきた。ノムラ・インターナショナル(香港)の張智威エコノミストは、15日のGDP発表を受けて、従来7.5%としていた14年の成長予測を一気に6.9%まで引き下げた。

成長率の動向とともに、もう一つの焦点は、秋口にも開催される予定の共産党中央委員会全体会議だ。ここで習近平政権による具体的な経済改革のプランが打ち出される見通し。金融制度改革など、その内容に大きな注目が集まる。

経済構造の転換に向けて抜本的な改革を推し進め、かつ、7%台の成長率を維持するのが中国のベストシナリオ。だが、政策運営を誤り、成長率が下限を一気に割り込むような事態に陥れば、世界経済にも影響が及ぶ。世界が中国経済の急減速リスクに戦々恐々とする状況は今後も続きそうだ。

週刊東洋経済2013年7月27日号

井下 健悟 東洋経済 記者

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いのした けんご / Kengo Inoshita

食品、自動車、通信、電力、金融業界の業界担当、東洋経済オンライン編集部、週刊東洋経済編集部などを経て、2023年4月より東洋経済オンライン編集長。

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