取材にあたって新宿総本店の「武蔵ら~麺」をいただく。仕事、盛り付け、お店のきれいさ、接客、本当に完璧なのである。当たり前がすべてしっかりできている。動物系と魚介系の二刀流スープ。すべてがビシッとしっかりまとまっていて寸分の狂いもない完璧な1杯といえる。
3月上旬の平日、午前11時前。東京・上野の「麺屋武蔵 武骨」は開店前から10人近い客がサラリーマン風の男性を中心に、行列をつくっていた。開店直後からほどなく店内の十数席はあっという間に埋まった。昼食にはちょっと早い時間からのこの勢いは、人気の高さをうかがわせる。
すきがないように見える麺屋武蔵だが、課題の1つは人材の確保だ。「業界全体の問題でもあるのですが、確かにラーメン屋になりたいという人は少なくなりました」と矢都木氏は明かす。麺屋武蔵はラーメン店としては高めの給与設定をしているが、「それでもまだ他の業界に追いついただけで、スタートラインに立った段階だ」(矢都木氏)という。
価格に見合うだけの価値を
日本のラーメン店は世界にも通用する味を持っているお店も少なくないのに、客単価は低い。象徴的なのが、ラーメン業界でいわれる「1000円の壁」だ。心理的に1000円を超えるか超えないかは、いくらおいしくても食べ手が本当に高いと感じる可能性があり、ラーメン店主はつねにそこに悩んでいる。
麺屋武蔵はラーメン店の中では高めの価格設定を続けており、豪華トッピングの乗った1100~1400円のメニューもある。従業員の給料はその粗利の中から出ている。高価格はなかなか理解されない側面もあるが、価格に見合うだけの価値をしっかりと提供し、高い粗利を確保して給料をはじめとする従業員の待遇改善に努めていくことが欠かせない。
「ラーメン業界を変えようとは思っていません。ですが、ラーメンの年表に麺屋武蔵の名前がたくさん載るような革新的な施策を今後もトライしていきたいですね。革新的なことをやり続けることでおのずとラーメン業界の風土も変わってくるといいなと思っています」と矢都木氏は言う。麺屋武蔵がラーメン界で、これまでに仕掛けてきたような革新的な取り組みを編み出すことも、ブランドと存在感を維持するうえで必要になってくるだろう。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら