日本人が知らない米国「聖域都市」の謎な実態

「不法移民保護都市」をめぐる米国人の葛藤

都市によって不法滞在者たちが享受できる権利は異なるが、「不法滞在であっても基本的人権を侵してはならない」という名のもとに、米国民と同じ公共サービスを受けることが可能となっている。その中には低所得者向けの医療保険、フードスタンプ(食料費補助)、住宅補助、児童福祉、合法移民向けの教育補助、職業訓練などが含まれ、場合によっては運転免許証の交付までもが認められている。

不法移民を保護し生活を支えるための資金源は、もちろん市民から徴収される税金だ。不法移民の実態調査などを行う非営利団体アメリカン・トランスペアレンシーが今年2月に発表した調査によると、聖域都市に住む住民が、不法移民のために負担する税金は、1人当たり年間平均300ドルから500ドルに上る。4人家族で1200ドルから2000ドルの年間の税負担。これは決して少なくない額だ。

合法移民は、不法移民をどう思っているのか

米国の合法的なビザ取得には通常長い時間が必要で、なかには親や結婚相手を呼び寄せるために、何年もかかって大変な思いをしている人もいる。特に永住権申請は手続きも複雑で、一筋縄ではいかない。私自身も、自分の母の永住権保証人になったときに、驚くほど手続きが煩雑で、最終的には弁護士を雇わねばならなくなった。正直、あの経験を思い出すだけで、ため息が出そうになるほどだ。

そんな大変な経験をした合法移民たちにとって、聖域都市で手厚い「待遇」を受ける不法移民は複雑な存在だ。

「聖域都市の現状は、まじめに正しい方法で移民してきた普通の人たちを、あまりにバカにしている」と嘆くのは、サンフランシスコ在住で、ウクライナから移民したナターシャさん(仮称)だ。彼女は米国人の夫と結婚するためのビザの申請に、3年を要したという。

その間離れ離れで、夫と会えたのは彼がウクライナを訪問する年に1回だけ。政府へ申請した書類が不備で戻ってきたり、そこで言われたとおりの書類を提出したのにまた不備と言われたりと、スムーズにことは運ばなかった。ようやく永住権を取得し、米国に到着したときには、感動のあまり空港で大泣きしたそうだ。

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