103系電車は今も人命救助を陰で支えている

見慣れた通勤電車が救助訓練の教材に

大東市にある大阪府立消防学校。敷地右奥に103系が設置されている(筆者撮影)

JR片町線の野崎駅から徒歩15分ほどのところにある、大阪府立消防学校。ここに、その車両は保管されている。校門をくぐって敷地内へ入ると、グラウンドの向こうに見慣れたスカイブルーの車体が見えた。その手前で、オレンジ色の服を着た人々が作業をしている。

「この車両は『鉄道車両事故訓練施設』と言います。鉄道事故が起こった際、どういった方法で救助すればよいかを、救助隊員が学ぶための実習施設として設置しております」と教えてくれたのは、同校の渡辺栄作教務課長。そう、この車両は消防隊員の訓練用実習施設として使われているのだ。全国には、全ての都道府県や一部の政令指定都市に消防学校があるが、訓練用に実物の鉄道車両を持っているのはほんの一部である。

「従来は、各市町村の消防本部が地元の鉄道会社の協力を得て、実車での訓練を行なうこともありましたが、学校内に鉄道車両が設置されたことで、より実践的な訓練ができるようになりました」(渡辺課長)

救助の手順を学ぶ貴重な教材に

さまざまな機材を活用して救助活動は行なわれる(筆者撮影)

ちなみに、この103系はクモハ103形110号車で、1967年に京浜東北線用として落成。後に阪和線~山陽本線で活躍し、2009年の廃車後、ちょうど整備工事が行なわれていた大阪府立消防学校の訓練施設として白羽の矢が立った。鉄道趣味的な目線で見ると、戸袋窓や客室窓などが製造当初のまま残っており、非常に貴重な車両である。

この日行なわれていたのは、府内で活躍する消防隊員を対象にした「専科教育」のうち、救助隊員の資格取得を目指す「救助科」の一環で、「電車事故対策」という授業。府内の各市町村から集まった隊員約50名が、ホームからの転落や踏切事故などで、車両に巻き込まれた人を救助する手順を学んでいた。

次ページ車両に巻きこまれた人をどう救う?
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