103系電車は今も人命救助を陰で支えている 見慣れた通勤電車が救助訓練の教材に

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JR西日本の社員(左端)も参加し、車両の扱い方をアドバイスする(筆者撮影)

「救助科の専科教育は、年2回開催されています。そのため、鉄道車両を使ったこの授業が行われるのも年に2回ですが、例えば新人隊員を対象にした『初任教育』で、高所へ上るためのハシゴのかけ方を指導する際など、他にもさまざまな場面で活用しています」(渡辺課長)

最近は救助機材はもちろん、鉄道車両の技術進歩も早く、救助手順がどんどん変わっているという。

「私たちの任務は『何も犠牲にせず、救助対象者を救うこと』です。要救助者はもちろん、周囲の人やモノ、そして他の救助隊員も、二次災害に巻き込むようなことがあってはならない。新型車両の情報を集めたり、構造や特性を理解して、不慮の事故が起こらないようにすることも、大切な業務です」(船間教官)

引退後に担う大きな使命

「ホームドアの設置など、鉄道会社側でも事故を減らす取り組みが徐々になされていますが、転落事故はまだまだ多発しています。もし人が転落したり、踏切に閉じ込められているのを見かけたら、ためらわずに非常通報ボタンを押してください。さらに、ホームで障がいのある方やフラフラと歩いている方を見かけたら、ぜひ声を掛けて手助けをしてほしい。あなたの一言で、事故が防げるのです」(渡辺課長)

人の命を救うため、訓練に励む消防隊の人々。そんな彼らを、引退後に大きな使命を与えられた1両の鉄道車両が、これからも陰で支えていくことだろう。

(※なお、この103系は、大阪府立消防学校の訓練施設として敷地内に設置されており、一般への公開はされていない。業務や訓練の支障となるため、同校への問い合わせや見学の申し込みはご遠慮いただきたい。)

伊原 薫 鉄道ライター

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いはら かおる / Kaoru Ihara

大阪府生まれ。京都大学交通政策研究ユニット・都市交通政策技術者。大阪在住の鉄道ライターとして、鉄道雑誌やWebなどで幅広く執筆するほか、講演やテレビ出演・監修なども行う。

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