「禁煙違反者30万円過料案」は当然の政策だ すでに50カ国近くで禁煙を法制化している

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1月12日に行われた「受動喫煙防止強化に対する緊急集会」の様子(撮影:尾形文繁)

こうした流れの中で多く聞かれたのが「禁煙は中小飲食店の売り上げ減少を招いてしまうのではないか」という声である。1月12日に「受動喫煙防止強化に対する緊急集会」が全国飲食業生活衛生同業組合連合会、日本フードサービス協会などによって開催され、中小飲食店経営者たちの悲痛な訴えが幅広く伝えられたからだ。

しかし、社会の仕組みとして禁煙を組み込んでいくことがさまざまな面で”プラス”に作用することは明らかになってきている。社会全体でプラスになるのであれば、健康被害をもたらすことが明らかで、また生活に必需ではない嗜好品であるタバコの楽しみ方に制約が設けられるのは自然な流れだろう。

そもそも今回の禁煙化に向けた法整備の流れは、2020年東京オリンピック開催を見据えたものだ。IOCとWHOは共同でオリンピック開催地での禁煙運動を進めており、北京・ロンドン・リオと続くオリンピック開催地の選定において、公共の場における禁煙化がひとつの基準になっていた。

飲食店の営業に与える影響は小さい

実際、これらの都市では受動喫煙を禁止する法整備が行われ、リオではレストランなど屋内における禁煙が法制化された。国内における議論以前に、東京オリンピックを誘致した時から禁煙ルールの法制化は既定路線と言える。

しかも、業界団体が懸念している飲食店における減収懸念についても、あまり根拠があるとはいえない。多くの調査結果が「売り上げに影響なし」となっている。

日本の成人喫煙率が20%を切っていることや、高所得層になるほど喫煙率が下がる傾向などを考えれば経済的な影響はないと考えるのが妥当だろう。喫煙者が喫煙可能な飲食店を探すのと同じように、喫煙できる飲食店を明確に避けて店選びをする層も一定以上存在するからだ。

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