風俗「五十路マダム」で不美人も売れる理由 明暗を分けるものとはいったい何か

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「頭では理解しても、気持ちが追いつかなかったんでしょうね。ノロケちゃいますけどウチは近所でも評判のオシドリ夫婦だったんで、夫のヤキモチがすごかった。自分がふがいないばかりにこの仕事をさせている、本音ではしてほしくない、でも言えない――という気持ちがたまりにたまって、ある日、爆発したんです。子どもたちに“母さんはこんな仕事をしとるんじゃ!”って暴露しちゃいました」

その後の静寂を、若林さんは忘れられないという。しかし、子どもたちは口々に「父さんこそ母さんを責めないでほしい」「離婚は絶対にダメ!」と父親をなだめ始めた。

「理解してくれた、とまで言うのは図々しいですね。子どもなりにイヤな思いもしたと思います。いずれあの子たちが社会人になって結婚して子どもができたときにでも、“あのとき本当はどう思っていた?”って聞いてみたい気はしますね。……夫ですか? 一度、爆発したらスッキリしたみたい(笑)。私から“いろんなお客さんと会うけど、あなたのことがいちばん好きなんよ、大事なんよ”と何度も何度も伝えて、オシドリ夫婦復活です」

現在の収入は月50万円前後

「五十路マダム」に設備されている自撮り写真用のミニスタジオ(筆者撮影)

仕事は楽しい、でも不安は大きい。売り上げが落ちる月もある。次から次へと新人が入ってきてはパイの奪い合いとなる。「それでもやってこれたのは、夫も子どもも私のことを否定しなかったから」という若林さんは現在、月50万円ほどを稼いでいる。

「おかげさまで、ローンを着実に返せていますし、子どもたちも大学にやれました。学費は奨学金のお世話になっていますが、県外に進学した子には家賃とわずかな生活費の仕送りもできていますし。いちばん下の子が大学卒業するまでは、このお仕事を続けるつもりです。辞めたら普通のパートに戻ろうと思っていますが、その前に夫と旅行に行きたいですね。私たち、新婚旅行もなくて夫婦ふたりの旅行を一度もしたことがないんですよ」

この仕事をして自分が変わったと思うことはありますか?と尋ねたら、若林さんはこう答えた。

「心から笑えるようになりましたね。睡眠時間20分の頃は、やっぱり無理して笑っていました」

性に対する価値観、特にそれを職業とすることへの価値観は育った環境なども大きく影響しているので、一朝一夕で変わるものではない。しかし本人の資質や環境、そしてこうしたセックス観などが折り重なって、稼げる人と稼げない人を分けている。年齢は大きなマイナス要素にならないが、年を重ねるほど本人の生活史が接客にどう反映されるかが問われるようだ。“今までの人生の、総当たり戦”ともいうべき世界が、五十路マダムでは繰り広げられている。

三浦 ゆえ フリー編集&ライター

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みうら ゆえ / Yue Miura

富山県出身。複数の出版社を経て2009年フリーに。女性の性と生をテーマに編集、執筆活動を行う。『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』シリーズや『失職女子』などの編集協力を担当。著書に『セックスペディア-平成女子性欲事典-』がある。

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