「リボ払い」知らずに起きている深刻な被害 負担は少なく見えても実際に総額は高くなる

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ただ、Aさんは、1度だけ、インターネット上で事後的にリボ払いにできるサービス「あとからリボ」の手続きをしたことがあった。ただ、それは1回限りの利用であると認識しており、その後のクレジットカードを利用した商品購入の際も、店員に対して支払方法(一括払いか分割払いか)を指定するだけでリボ払いにするなどとはいっさい告げていなかった。それにもかかわらず、その後の取引はすべてリボ払いにされてしまったのである。

リボ払いは、毎月一定の金額だけ払えばよいので負担は少ないように感じてしまいがちだが、実際には手数料(利息)が取られるので、支払金総額は増えてしまう。その仕組みから当然に支払期間は長期化してしまい、手数料負担が増えることになることから、利用を繰り返していくと多重債務の原因にもなってしまいかねない。

リボ払いといっても方式が複数あり、その仕組みも複雑なため、一般の人が正確に仕組みを理解することは困難な場合が少なくない。また、Aさんのように知らない間にリボ払いにされてしまうケース(「知らぬ間リボ」)も報告されている。

多重債務の温床

クレジットカードのリボルビング払いについては、契約にあたってのトラブルが多数発生。国民生活センターにも相談が多数寄せられ、業界に対しても情報提供を十分に行うよう要望なども出されている。たとえば、国民生活センターに寄せられた具体的な相談例は、店頭で勧誘されるままにクレジットカードをつくった人が、後日請求書を確認したらリボ払い専用カードだったことに気づいたケースがあるそうだ。この専用カードの場合は、買い物の際に「一括払い」と告げても、自動的にリボ払いの設定になっていたり、支払額が設定額未満でも、手数料がかかったりするという。

クレジットカードの会社としては、利用規約上明記されている内容で契約が成立している以上、問題ないという立場なのかもしれない。

しかし、熊谷さんのケースをとってみても、インターネット上での契約変更手続き、通知人に出されたご利用代金明細書などで契約者に対する十分な情報提供がなされたとはいえない。

法的に考えてみても、熊谷さんは、リボ払いの契約をする認識をまったく欠いており、そこに不注意があったともいえない。そうであれば、熊谷さんがインターネット上で形式的には契約を成立させていたとしても、契約は無効になる可能性がある(民法95条錯誤無効)。

貸金業法が改正され総量規制が導入され、通常の借り入れについては一定の歯止めがかけられているが、クレジットカードを用いたショッピング利用については貸金業法の規制が及ばないため、リボ払いを使う形で多重債務の温床となっているともいわれている。

クレジットカード業界でも情報提供をわかりやすくしたり、リボ払いの返済期間を自主的に制限したりなど一定の対策を講じているようであるが、トラブルは後を絶たない。

クレジットカードは、現金を持つことなく買い物などをすることができ、カード利用することでポイントやマイルが貯まるなど便利な一面をもっているが、その本来の意義は、カードを用いた「信用払い」つまり「ツケ」であり、クレジットカード会社はそこで発生する利息、手数料を得ることで利益を上げているということを忘れてはならない。

現代社会でクレジットカードを持たないという選択をすることは難しいかもしれないが、可能なかぎりリボ払いの基本的な仕組みを理解したうえで、少なくとも毎月の利用明細を細かくチェックするなどトラブルの発生を未然に防ぐことだけは、利用者一人ひとりが認識しておいたほうがいいだろう。

戸舘 圭之 弁護士

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とだて よしゆき / Yoshiyuki Todate
弁護士(第二東京弁護士会所属)。「ブラック企業」問題に取り組む弁護士が結集したブラック企業被害対策弁護団の副代表をつとめるなど労働事件に積極的に取り組んでいる。その他、民事事件、家事事件など一般事件を広く手掛ける傍ら著名な冤罪事件「袴田事件」の弁護人としても活動するなど刑事事件にも力を入れている。戸舘圭之法律事務所(http://www.todatelaw.jp/
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