乙武洋匡「私の意見は障害者の総意じゃない」 中川淳一郎に語った「政治家を目指した理由」

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

乙武:うーん、そうですね。ただ、社会の中で自分が何をすべきかというのは、一方で、ずっと意識をしてきたことなんです。マイノリティという存在は、ただ数が少ないという理由だけで、なぜ不利益を被らなければならないのか。そういうことを、マジョリティ側の人が言ってくれても、それはそれでありがたいんですけど、やっぱり響きにくいように思うんです。それを、マイノリティ、数が少ない側の人間が言うと、「なるほどね」と思ってくださる数が変わってくる。それが、私が俯瞰して見たときの「乙武洋匡がやるべきこと」だと思っているんです。

ただここ数年、ひずみが生じていた部分があると思うんです。皆さんから見れば、「マイノリティ=弱者」。だから、さっきのメッセージは弱者が主張することに意味があったと思うんです。ところが、いつの間にか私の存在は皆さんから見て「強者」だと映るようになってしまった。だから、「あいつの物言いは鼻につく」と、なかなか素直に受け入れていただきづらくなってしまった。だからこそ、「そろそろ私じゃない人間が出てきてほしいな」と感じているんですよね。

優遇と措置をはき違えないでほしい

中川:最近、ネット上に「障害者様」という言葉があって、頻繁に見られるんですよ。障害者は強者、という意味なんですよね。

乙武:なるほどね。

中川:「ベビーカー様」という言葉もあります。「そこのけそこのけ、ベビーカー様が通る」と使われる。ベビーカーを邪魔だと思う人にとっては、それを押す母親が「おらおら、どきなさい」って、自分を排除しているように感じて、「ベビーカーを押すお前は強者だ」と批判している。この2つの言葉に関してはちょっと問題があるなと、今われわれは思っていて。

河崎:あと「妊婦様」もありますね。

乙武:もう私からしたら、「だったら、なればいいじゃない」のひと言ですね。そんなに弱者を強者だとうらやむなら、「実際にその立場になってやってごらんよ」と。たとえば私を強者だとうらやむのなら、「どうぞ、手足を切り落としてみてください」と。それで本当に「どうだ、これで強者だぞ」とドヤ顔できる自信があるなら、どうぞやってみてください。誰も止めませんよ、と。

それにね、「障害者様」という言葉の裏には、「あいつらばっかり優遇されやがって」という思いがあると思うんですけど。私のそれに対する反論は、「優遇と措置をはき違えないでほしい」ということなんです。

全員が±0のフラットな状態なら、特定の人々、今の文脈で言えば障害者だけがプラスを与えてもらうことは確かに優遇になる。でも、何もしない状態だと、それだけで不利益を被る特定の人々がいる。その人たちだけにプラスを与えることで、±0、フラットな状態にしましょうというのが措置だと思うんです。今、一般的に行われていることは措置であって、優遇ではない。それを「優遇だ、優遇だ」と騒ぐのは、まったく前提が見えていないなと思うんですね。

中川:そこは、政治が介入してやっていくべき部分ですね。

乙武:おっしゃるとおりです。

中川:保険料が年収に応じて高額になっていく話や、累進課税っていうのは、正しい姿だと思っているんです。ネットであれこれ言う人たちは、他人が得するしないで嫉妬するような狭い視野で考えるのではなくて、全体最適という考え方を身に付けていってほしいですね。

河崎 環 フリーライター、コラムニスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

かわさき たまき / Tamaki Kawasaki

1973年京都生まれ、神奈川県育ち。桜蔭高校から親の転勤で大阪府立高へ転校。慶應義塾大学総合政策学部卒。欧州2カ国(スイス、英国ロンドン)での暮らしを経て帰国後、Webメディア、新聞雑誌、企業オウンドメディア、テレビ・ラジオなどで執筆・出演多数。多岐にわたる分野での記事・コラム執筆をつづけている。子どもは、長女、長男の2人。著書に『女子の生き様は顔に出る』(プレジデント社)。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事