人間誰しも、魔が差すことはある。マイナスな気持ちは負の出来事を引き寄せてしまう。婚約破棄をされてムシャクシャしていたとき、男友達にキャバクラに誘われた。
「“女にフラれてクサっているなら、パァーッと遊びにいこうぜ”と。それまでそういうお姉ちゃん系の店には、1度も行ったことがなかったんですが、一緒に行った店にドンピシャ、タイプの子がいたんです」
ギャル系雑誌の元モデルをしていたという、茶髪にクリンとした瞳の28歳。アイドルグループのメンバーにいてもおかしくないかわいらしい容姿に目が釘付けになった。
「隣に座って体を寄せてきて、“カッコイイね。タイプかも”と言われたんです。キャバ嬢への免疫もなかったし、そこで心をつかまれてしまった。以来、その子を目当てに店に通うようになりました。そしたら、“店以外でも会いたい”と言われて、もう有頂天ですよ」
そうして、昼間も会ってデートをするようになった。かわいらしい彼女を連れて歩くことも、一緒に食事をすることも、この上なく楽しい時間だった。打ち解けてくると身の上話もするようになり、バツイチで4歳の子どもを育てているシングルマザーだということがわかった。
「最初のダンナはモデル時代に知り合って、すぐに妊娠。彼女が妊婦になると浮気を繰り返して、出産して間も無く離婚になったそうです。若いのにすごく苦労をしていたし、一生懸命に子どもを育てている姿が健気でした」
会う度にどんどんのめり込んでいった。「今度結婚するなら、うんと年上がいいんだよね」「子どもにはやっぱりお父さんが必要だと思うんだ」「結婚したら、またモデルの仕事を再開して、ママタレでテレビとかにも出たいな」……。
100万円貢いだのに、突然の音信不通
そんなことを語る彼女との結婚を、孝雄はいつしか夢みるようになっていた。
「外で会うようになって彼女は店を辞めたんです。夜ではなくて昼間の仕事をしたいからって。実際僕もキャバクラでは働いてほしくなかった。だけど昼間の仕事ってキャバクラみたいに稼げないじゃないですか。今月家賃が払えないといえば20万貸し、子どもが病気になったといえば5万、彼女が病気になって入院するといっては30万、おカネをどんどん貸すようになっていました」。
その金額は、2カ月間で100万を超えていた。
「『普通に生活していて、こんなにおカネがいるのはおかしいな』とは思ったんですよ。でも、断ったら次に会えなくなる気がして言われるがままにおカネを出してしまいました」
ところがある日突然、電話がつながらなくなった。何度かけても“現在使われていません”のアナウンスがむなしく繰り返されるだけ。
「電話が繋がらなくなって、どうしたの?」
「住んでいる家も住所もわからないし、打つ手立てがありませんでした」
「えっ!? どこに住んでいるかも知らなかったの?」
「ええ。会うのはいつもファミレスかカフェ。そこで2時間くらいしゃべって近くの駅まで送るというデートだったので」
「立ち入ったことを聞いてもいい? 男女の関係は?」
「ありませんよ」
「ええーーっ!!」
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