アサンジとスノーデン「情報暴露者」の行く末 トランプ政権が変えうる2人の運命
ひとつは、大統領の目である。仮に有罪判決を受けても、トランプ大統領が恩赦を与えることもありうる。もうひとつは、世間の目。前述したように、隠されていた不正を暴いたことで、アサンジ氏は尊敬を集めた。いわば自由と民主主義を守るために闘うネット戦士と見なされたのであり、実際、アメリカによるドローン攻撃やグアンタナモ基地での拷問などに強く異を唱えてきた。その同じ人物が、「拷問してもいい」と閣僚に告げる大統領の選出に一役も二役も買ったのだ。トランプ政権の周囲には、アサンジ氏を「自由の闘士だ」と持ち上げ、性的暴行事件については「完全なデッチ上げ」と彼を擁護する人物もいる。イギリスでの報道では、すでにアサンジ氏は米司法省に、自分の扱いがどうなるか打診しているという。新司法長官は、トランプ氏と極めて考え方の近いジェフ・セッションズ氏だ。
皮肉なことに、晴れて自由の身となった場合、彼はこれまでとは正反対の、世間からの冷たい目を感じることになるだろう。組織としてのウィキリークスの内部でも、米大統領選をめぐるアサンジ氏の方針には反対意見があり、組織を離れる人たちもいるとされる。
明暗わかれる「情報暴露者」
実はもうひとり、エクアドルに逃げようとした「情報暴露者」がいた。エドワード・スノーデン氏(33)だ。こちらは、CIA(中央情報局)やNSA(国家安全保障局)といったアメリカ政府の情報機関が、外国首脳から民間人までを対象に、幅広く盗聴・ハッキングの対象にしてきたことを暴いた。同じく追われる身となり、エクアドル本国を目指したが、トランジット地点のモスクワでその先のフライト搭乗を封じられ、結局、ロシアに居住許可を得て、もう3年以上をロシアで過ごしてきた。アサンジ氏は、スノーデン氏を支援してきたと言っている。
スノーデン氏についても、米当局の度を越した、自由と人権と外交儀礼を無視した盗聴行為を世間に知らせたとして、英雄視する向きも少なくない。しかし、アメリカ政府から見れば犯罪者で、帰国すれば30年の刑は免れないと言われる。アサンジ氏との大きな違いは、トランプ氏の援軍に加わったわけでもなく、むしろトランプ氏からは「国家の裏切り者」呼ばわりされていて、恩赦など望むべくもないことだ。
2月10日、米NBCテレビは、「ロシア(のプーチン大統領)が、(仲のいい)トランプ大統領へのプレゼントとして、スノーデン氏の引き渡しを検討」と伝えた。何とも恐ろしい話だが、ロシア問題専門家によれば、送還が現実のものとなる可能性はあるという。
明か暗か──。アサンジ氏については予測が難しいが、スノーデン氏を待っているのは「暗」なのかもしれない。(2月16日記)
(文・堤伸輔)
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