文科省天下り、「墨塗り文書」が語る癒着事情

役に立たなければすげ替えも実施していた

要するに最初に天下った文科省OBは「働きが悪い」ので、別の「よく働く人物」にすげ替えてくれとの依頼があったというわけだ。そしてすげ替えられたOBは別の天下り先に再就職しているのも明らかにされている。

「これは天下り先に“序列”があると見ることができる。役に立たないOBを、下部の天下り先に送りこむシステムがあるのだろう」

天下り問題を追及する民進党の玉木雄一郎衆院議員はこう分析する。「問題は、何をもって『働きが悪い』としているのかだ。本省から何かのひも付きを持ってくることが『よく働く』と評価しているのなら、非常に大きな問題となる」。

予算をとってくるための天下り

実際に予算をとってくるための天下りとしか思えない事例もある。文科省が「公立学校共済組合」と認めた記載箇所は以下のようになっている。

同年11月10日、■の■である■から■宛てに電話があり、■は■氏から、同【組合】が抱える【病院】である【研究】予算を増やすために、【科学研究費】を申請できる機構となるためのアドバイザーとして適任者を紹介してほしいという依頼を受けた。
■は同依頼を失念していたところ、約一カ月後の12月中旬、■氏から催促の電話を受けたために、急いで■氏に調整を依頼し、■氏という文科省OBの打診を受け、■は■氏に対し、同28年1月5日、■氏を紹介した。(注:【】は当初は■であった箇所を2月13日に文科省が明らかにした部分)

 

これは明らかに「研究予算」を分捕るために天下りを受け入れたという例だ。もっとも文科省は「今回の再就職あっせん問題は文科省側の問題であり、法人等について非はないことから、これら法人に対して私学助成等の国費を支出することについては問題がないと考えます」と、天下り先への責任追及を極力阻止したい様子だ。

公立学校共済組合の「科学研究費」についても「研究者から応募された研究計画について、ピアレビューによる厳正な審査を経て決定している研究者個人に対して支出されるものであり、これらの法人への文部科学省予算の支出に含まれていない」と弁明している。

しかし公立学校共済組合は「病院の研究予算を増やす」ことを希望しており、そのために「科学研究費を申請できる機構」になりたがっていた。よって「病院の研究予算を増やすこと」と「アドバイザーとして適任者の天下りを受け入れること」は因果関係にあるといってよいはずだ。

そもそも公務員は所轄省庁の長の申し出により、人事院の承認を得た場合を除いて、離職後2年間は、離職前5年間に在職していた国または特定独立行政法人と密接な関係にある営利企業の地位に就任したり、就任を承諾してはならないとされ、違反者には1年以下の懲役あるいは50万円以下の罰金に処せられた。

ところが第1次安倍内閣時の2007年に国家公務員法が改正され、2年間の制限は撤廃される。天下りの規制対象が営利企業以外にも拡張されるとともに、府省庁による再就職あっせんの禁止、在職中の求職活動の禁止、再就職者からの働きかけの禁止が定められた。

このとき、再就職について設置されたのが「官民人材交流センター」だが、その利用は早期退職制度に応募した場合に限られ、自主的な早期退職や定年退職の場合は利用できないことになっている。現実には利用者数は極めて少なく、それが今回の天下り問題の一因となったともいわれている。

今回の文科省の天下り問題でも、深くコミットしていた前川喜平事務次官が引責辞任したが、前川氏には約8000万円の退職金が支払われ、数年後には何らかのポストがあてがわれるはずだ。国民が知らないところで、天下りの根っこは生き続けている。

天下り撲滅のためには、まずは国民が覚醒しなければならないが、そのためには詳細な調査と全面的な情報公開によって深刻な実態がつぶさにわかることが必要だろう。

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