「原宿駅改良計画」に渋谷区が不安を抱く理由 外国人を魅了する建築物が姿を消す可能性も

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これからの街づくりは「今あるものをいかに活用するか」が焦点となる。にもかかわらず、日本の多くの街はそこから逆行している。今あるものを生かすのではなく、スクラップ&ビルドの精神で今あるものをどんどん壊し、新しいモノをそこに建ててしまう。

ここで私は小池百合子都知事にひとつの提案をしたい。民間企業が好き勝手に建築物を壊したりできないように、ニューヨークやパリのような規制を設けるのはどうだろうか。どういう基準に基づいて、どういった建築物や場所を保存するかのヒントは、ほかの都市から得られることだろう。これによって、日比谷図書館や文化庁は「オフリミット」にできるかもしれない。

「もったいない」精神はどこへいった?

そんな規制があれば、あの美しかった三信ビルディングや、旧日比谷三井ビルディングを残せたのではないか。そうなれば、あの辺りの土地の価値はニューヨークのセントラルパーク前に匹敵するほどになっていたはずだ。かつて環境大臣を務めたことがある小池知事のことだ。それくらい街の景観や価値にも関心があるだろう。

かつて日本に住んでいたジャーナリストのブルーノ・ビオッリ氏は私にこう言ったことがある。「東京の街はすさまじい速さで変わっていく。自分の孫に『ここが、おじいちゃんがおばあちゃんと出会った場所だよ』とも言えない。なんて悲しい話だ」。

日本人の「もったいない」精神はどこにいってしまったのだろうか。2週間程度のスポーツ大会のために、東京の至るところで価値の高い建物が壊され、再開発が進もうとしている。その祭典が終わったら、この街に何が残るのだろうか。世界中の誰が、新しいモノしかないような街を訪れようと思うのだろうか。真の東京の価値は何になるのだろうか。

フランスの『フィガロ』紙の取材で、米軍基地問題で揺れる辺野古を訪れたことがある。そこで見たのは、辺野古の自然や海を守ろうとするコミュニティの強い結束だ。老若男女が協力し合って、何時間も、時には何日も冷たい海に入って米軍の作業を遅らせようとしていた。

今こそ東京は、この再開発ラッシュについて改めて考え、将来どんな街に住みたいか、どんな街にしたいかを考えるべきだ。東京人よ、この街の将来を考えているなら、今こそ声を上げるべきだ。その相手はJR東日本でもいいし、小池都知事でも、メディアでもいい。原宿駅の問題は、地域限定の問題ではない。これが今後の東京の行方を左右するかもしれないのだ。

レジス・アルノー 『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員

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Régis Arnaud

ジャーナリスト。フランスの日刊紙ル・フィガロ、週刊経済誌『シャランジュ』の東京特派員、日仏語ビジネス誌『フランス・ジャポン・エコー』の編集長を務めるほか、阿波踊りパリのプロデュースも手掛ける。小説『Tokyo c’est fini』(1996年)の著者。近著に『誰も知らないカルロス・ゴーンの真実』(2020年)がある。

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