「原宿駅改良計画」に渋谷区が不安を抱く理由 外国人を魅了する建築物が姿を消す可能性も

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そのうえでJR東日本は「新駅の利用が始まれば現駅舎の必要性はなくなるが、それでも駅舎を残すには費用が発生するうえ、その資産価値から生まれる金額も放棄することになる。渋谷区はそこを保証できるのか、と問うてきた」と長谷部区長は話す。直接的なコスト負担は求められていないと言うが、それ相応の見返りがなければ保存は難しいと考えている可能性はある。

もうひとつ、今回の改良工事計画で見逃せないのは、新駅の改札が明治神宮の土地に「入り込んでいる」ことである。ご存じのとおり、原宿駅には正月3が日使われる臨時ホームと、臨時改札がある。原宿表参道欅会の松井理事長によると、JR東日本は新駅の改札口をそちら側に設ける計画で、「すでに(土地の持ち主である)明治神宮とも話がついているのではないか」と言う。

JR東日本は改良工事の目的を、「混雑緩和のため」としている。これについては、地元も渋谷区もその必要性を強く感じていて、異論はないようだ。しかし、「混雑を緩和するということが目的であれば、現駅舎側の改札も引き続き使うべきだろう。にもかかわらず、現駅舎側については言及がない。仮にそこを商業施設にするような考えがあるのならば、本当に釈然としない」と松井理事長は話す。

原宿にとって明治神宮は非常に神聖な場所だ。その土地を借りる一方で、もともと駅があった場所に商業施設を建てるとなれば、JR東日本が相当の「家賃」を明治神宮に支払うのではないかと勘繰りたくなってしまう。

外国人から見ると高い乗車料金

なぜJR東日本は、原宿駅の保存に「後ろ向き」なのだろうか。それは、「民間企業である以上、株主が求める利益を出す義務があるから」(同社関係者)なのかもしれない。何せ原宿駅を保存するには前述の通り、コストがかかるのだ(これに対して、渋谷区の長谷部区長は「株主や世論が求めているのは、駅の保存ではないか」と疑問を投げかける)。

一方、利益を出すために同社がやっていることの中には、フランス人の私から見ると、納得がいかないものがある。たとえば乗車料金。多くの外国人が日本に居住してまず驚くのは料金の高さだ。たとえば、東京から仙台(所要時間は約1時間半)の1キロメートル当りの乗車料金は最安値で比較した場合、距離的には変わらないパリ―ナント間(所要時間は約2時間)の5倍もする。単純比較はできないかもしれないが、それだけの料金を利用者から取っているのであれば、株主だけでなく利用者の声も聞いて、公共性の高い企業として街づくりや景観にも積極的に関与するべきだろう。

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