「原宿駅改良計画」に渋谷区が不安を抱く理由 外国人を魅了する建築物が姿を消す可能性も
これに危機感を抱くのが、地元の町会や商店街などだ。「計画について最初JRから説明を受けたとき、『もう役目を終えた古い駅舎なので』と言われて、このままでは絶対に壊されると感じた」と、地元町会などを束ねる「原宿神宮前まちづくり協議会」の代表幹事で、原宿竹下通り商店会の遅澤一洋会長は話す。「駅長にも訴えに行ったが、駅長にも『もう古い駅なので』と言われてしまった」。
実は地元が駅舎の保存を求めたのは今回が初めてではない。「15年ほど前から駅は街のシンボルであるから、保存に努めてほしいと要請をしてきた」と、原宿表参道欅会の松井誠一理事長は言う。「2000年ころに、鎌倉駅が、地元や議会の反対にもかかわらず、時計台を除いて取り壊されたこともあって、保存しなければならないという考えが強くなった」。
昨年6月の発表後、松井氏やまちづくり協議会などはJR東日本に改めて保存を求める要望書を提出したほか、駅改良工事の説明会などでも保存の必要性を繰り返し訴えているが、今のところ、駅舎については検討中という答えしか返ってこないという。まちづくり協議会は14日に保存案をまとめ、JR東日本と協議を行っている渋谷区に提出している。
「JRの幹部に話を通してもらえない」
一方、協議を行っている渋谷区からは不満の声しか聞こえてこない。渋谷区は、保存あるいは、建て直す場合でも現駅舎を残すことを求めており、「こちらは責任のある人と話したいと申し入れているのだが、上にあげてもらえない。当初改良の話が出た際は、地元の意見を聞くと言いながら、東京支社の担当者からは(責任者とは話が)できないと言われてしまう」と、長谷部健区長は憤る。
「このまま何もないようであれば、署名活動を始めるなど、自分が先頭に立ってこの問題について声を上げざるを得ない」という(これに対して、JR東日本は「渋谷区長と打ち合わせさせていただくなど、渋谷区と今後の進め方について調整させていただいているところ」としている)。
JRが現駅舎の保存を「渋る」には理由があるのかもしれない。複数の関係者によると、JR東日本が渋谷区に対して、原宿駅の土地の価値を150億円とする試算を示している。
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