トランプの入国制限、「イスラム教徒」の本音

トランプ支持だった青年も困惑

ラジャさんも、ジャイバナさんと同じ考えだ。今回の大統領令は間違いなくイスラム教徒追放令だが、米国はこれからもずっとイスラム教徒にとって安全な避難場所に変わりない、と考えている。「イスラム教徒たちは、米国に自由を求めてやってくる」とラジャさんは言う。

実際、自分もそうだった。学生として米国にやってきて、その後仕事を始めて結婚し、ニューヨークが安住の地となった。彼は自分のことを愛国者だと信じており、イスラム教徒であることで愛国心が変わることはないと考えている。昨年の大統領選で彼にとって重要なポイントは3つだった。移民政策、インフラ政策、そして雇用対策だ。この3つを重視した結果、彼はトランプ大統領に票を投じた。

実はオバマ時代から入国制限はあった

実のところ、ラジャさんは安全面から今回の入国制限について完全否定しているわけではない。しかし、トランプ大統領やり方には怒りを覚えた。「トランプ大統領は今回の件で、とても多くの人を『のけ者』にしてしまった。彼は宗教のことを理解しようともせず、自分のゲームをプレーしようとしている」(ラジャさん)。そして、この姿勢がテロリストに関する歪んだ考えを構築し、罪のない人々を傷つけるイスラム教徒バッシングにつながっているとみる。

実際、テキサス州やカナダではモスクを狙った事件が後を絶たない。1月7日には、テキサス州オースティンで建設中のモスクが火災により焼失したほか、28日にもビクトリアで街唯一のモスクが焼け崩れた。

今カーンさんが恐れるのは、イスラム教徒による「反応」だ。「何かを起こせば、必ずそれに対するリアクションがある。イスラム教徒追放令を出しておいて、その対象となっている人たちが反応しないわけがない」。彼女は今回の大統領令は、テロリストを憤怒させた可能性があると見ており、トランプ大統領はすぐさま戦略的な方法で入国制限を取り下げるべきだとしている。

確かにトランプ大統領がもっと、外交的なアプローチをとったのならば、ほとんどのデモや、怒りによる行為は防げただろう。2015年12月、オバマ前大統領はビザ免除プログラムを改定すると同時に、「テロリスト渡航防止法」に署名し、翌月施行した。

2015年11月にパリで起きた同時多発テロを受けて施行された同法では、ビザ免除の対象となっている国籍でも、2011年3月以降にイラン、イラク、スーダンあるいはシリアに渡航・滞在したことがある人物や、ビザ免除プログラム対象国の国籍と、イラン、イラク、スーダン、シリアのいずれの国籍を有する二重国籍者による入国を厳格化していた。

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