トランプの入国制限、「イスラム教徒」の本音

トランプ支持だった青年も困惑

さらに、2016年2月に国土安全保障省が、上記の対象にリビア、ソマリア、そしてイエメンの国籍保有者を追加することで、イスラム諸国7カ国(今回、トランプ大統領によって入国制限の対象となった国と同じだ)に入国したことがある人の米国への入国を厳しくしていた。ただし、この時点でもこれらの国籍を有する人が、各国の米国大使館で通常のプロセスを経てビザを申請することは許可していた。

トランプ大統領もこの路線を踏襲し、対象となっている国籍保有者のビザ申請審査をより厳格化するだけでよかったのではないか。少なくとも、今回取材した3人は審査の厳格化は理にかなっていると話す。

「すべての犯罪者は米国への入国を許されるべきではない」と、ファティマさんは言う。「テロリストはイスラム教徒ではない。私たちイスラム教徒は、キリスト教徒と同じような価値観を持っている。誰かを殺害したいと考えている人はイスラム教徒ではないし、米国へ入国させるべきではない」

米国は移民のおかげで繁栄してきた

一方ラジャさんは、米国に住むイスラム教徒にとってのこれからの課題は、いかに正しい形で米国に解け込むか、だと話す。それによって、イスラム教は平和と平等を尊重する宗教であるとの認識を広める。そうすれば、トランプ大統領もイスラム教徒をひとくくりにしなくなるのではないか、と見る。

もちろん、米国人の多くはイスラム教徒を十把一絡げで見ていないし、差別もしていない。米国人のほとんどは、イスラム原理主義者といわれる、カリフォルニア州サンバーナーディーノで怒った銃乱射事件の犯人と、元ソマリア難民で先の選挙でミネソタ州の下院選に当選したイルハン・オマール氏はまったく別の思想を持つ、まったく異なる人物だということは、説明されるまでもなく理解している。

それでも、今回の入国制限騒動は米国に住むイスラム教徒の心に大きな傷を残すだろう。言わずもがな、米国は移民の国である。ニューヨーク市にあるエリス島を訪ねると、いかにこの国が移民によって繁栄してきたかわかるはずだ(エリス島には、移民博物館がある)。イスラム教徒ももちろんその一部である。トランプ大統領には今後、この点についてより理解を深める責任がある。

米国の安全を守ることはすべての大統領の責任であることは間違いない。米国人もそれを当然求めている。ひょっとしたら、トランプ大統領は、反トランプのデモ隊が掲げるスローガンを取り入れたほうがいいのかもしれない。「共に強くなろう」という。

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