トランプの入国制限、「イスラム教徒」の本音 トランプ支持だった青年も困惑
「米国はずっと、より高みを目指してやってきたし、歴代の大統領もそのスタンダードを維持することに力を注いできた」と、カーンさんは話す。「米国はこれまで難民・移民を受け入れてきた国であり、それが変わることはありえない」。トランプ大統領が、選挙中に「イスラム教徒追放」をうたっていたときも、たいして気にしていなかった。「そんな反米国人的なことがまかり通るわけはない。そんな人種差別的なことが起こるわけがないと考えていた」。
ところが最近、南部のサウスカロライナ州を訪れた際、カーンさんは自ら人種差別を体験した。街のホテルにチェックインしたときのこと。朝5時に到着した後、午後1時にチェックアウトしたいと申し出たのにフロントデスクは知らん顔(本来ならレイトチェックアウトができたはず)、朝の8時には部屋の前を掃除機が行き交うため目覚めてしまい、仕方なく朝食を食べに行くと、居合わせた客全員から冷たい視線を浴びた。そこで、家族全員肩を縮めてそそくさとホテルを後にした。
美容院で起きたショッキングな出来事
ガンビア・イスラム共和国出身のジャイナバさんも最近似たような場面に遭遇した。美容院の駐車場でソマリア人の男性が車を出そうとしていたところ、誤ってほかの車にぶつけてしまった。その後、起こったことがあまりにショッキングだった。
「ぶつけられて怒った車の男性が、美容院の中に入ってきてイスラム教徒を侮辱し始めた。イスラム教徒は米国を崩壊すると叫びながら」と、ジャイナバさんは振り返る。彼女はずっと沈黙を保っていた。理由がある。彼女はヒジャーブ(イスラム教徒の女性が顔を隠すために用いるスカーフ)を着用しているのだ。それによって、彼女がイスラム教徒であることは明らかだった。すでに、彼女の友達や親戚の多くは、恐怖のあまり外出の際にヒジャーブを着用しなくなってきている。自分たちが人種差別の対象になると思っているからだ。
クリントンを支持していたジャイナバさんは、人種差別のターゲットになることは、イスラム教徒に寛大なシアトルではまずないと考えている。実際、シアトルに住む黒人の約75%は、シアトル南部に住むソマリア出身のイスラム教徒だ。彼らの多くはトランプの「仕打ち」に腹を立てているが、同時に自分たちの親戚をソマリアから米国に連れてくることに慎重になり始めている。
ジャイナバさんの店でイスラム教徒を侮辱した男性はその後戻ってきて、謝罪をした。そのとき、彼女は確信した。米国は今でもきちんとした国であり、一般的な市民はまっとうな道徳心を持って生きていると。