最新!「新・企業力ランキング」トップ300社 1位富士重工業、財務で計る企業の実力

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さて、これまでのランキング11回のうち、トップ企業は富士重工業(第10・11回)を入れて、4社しかない。各社の現在の順位も紹介しよう。

第6回から第9回まで4年連続トップだった国際石油開発帝石は前年の19位から今回66位までランクダウン。ここ数年の原油安の影響から2016年3月期の売上高は1兆0095億円とピークの2014年3月期1兆3346億円から24.4%の減収、営業利益も7336億円から3901億円とほぼ半減となった。成長性は2年前の834点、前年725点、今回655点へと大きくダウン。2017年3月期も減収・営業減益見込みのため、さらに厳しくなりそうだ。

第3回から第5回まで3年連続トップだった任天堂はランキング外の307位(3186点)。第1回、第2回トップの武田薬品工業は150位(3336点)と上位を維持し続けるのはなかなか難しいようだ。

ほかに注目企業をいくつか挙げておく。損失隠しで経営が混乱していたオリンパスは58位まで上昇(3488点)。自己資本比率も40%程度まで回復し、安全性得点が向上してきた。

3409点で104位だったのが電通。対象は2015年12月期までで業績は好調。2016年12月期も最高益更新の見込み(2月6日時点)などで、次回も評価は悪くはなさそう。

ただ、デジタル広告不正取引や従業員の過労自殺をきっかけとした労働環境改善など早急に対応すべき課題も多い。好業績がこうした点を犠牲にしていたためだとすると、今後、業績悪化の可能性もありそうだ。

各業種のトップ企業もいくつか見ていこう。建設業は積水ハウスと大和ハウス工業が3547点(総合33位)で仲良くトップ。食料品は52位味の素(3497点)。医薬品は16位アステラス製薬(3616点)が20位大塚ホールディングス(3603点)、41位第一三共(3527点)などを抑えた。

不動産は9位飯田グループホールディングスが94位三井不動産(3424点)、111位野村不動産ホールディングス(3390点)、123位三菱地所(3378点)などを上回った。

続いて業種内のライバル企業をいくつかご紹介する。携帯3社は23位KDDI(3580点)、51位NTTドコモ(3500点)、103位ソフトバンクグループ(3411点)という順位。

総合商社は124位豊田通商(3376点)がトップ。以下、135位伊藤忠商事(3362点)、149位三菱商事(3340点)、162位三井物産(3317点)、169位住友商事(3310点)と続く。百貨店は172位三越伊勢丹ホールディングス(3306点)、224位J.フロント リテイリング(3239点)、258位高島屋(3210点)となった。

高い技術力を持つ会社が業績を大きく伸ばす時代に

今回のランキング上位10社では富士重工業(1位)、村田製作所(3位)が前回と同順位で入ったほかは8社すべて入れ替わった。日本ペイントホールディングス、キーエンス、日立金属、SMC、日本電産などはこれまであまり上位に入っていなかった会社だ。大きく目立つことはないものの高い技術力を持つ会社が業績を大きく伸ばす時代になったことがうかがえる。

家電製品などでコモディティ化が進み、グローバルでの総合家電メーカー等の強みは失われつつある。その一方で部品や制御機器、モーターといった製品は国内・海外を問わず利用が広がる構図が鮮明になりつつある。

ここ数年、本ランキングでもBtoB企業の財務面の強さが明らかになってきたが、これからの日本を牽引する産業は、実は部品や装置といった、これまで少し目立たなかった分野の可能性が高い。高度成長期以降、当然のように思われてきた企業の序列は10年や20年後には大きく変わっているのかもしれない。

●第11回新・企業力ランキング(東洋経済・上場企業財務評価)について
東洋経済新報社「財務・企業評価チーム」が作成。アドバイザーは明治大学商学部・大学院商学研究科の山本昌弘教授(研究担当副学長)。東洋経済が保有する財務データを使い、多変量解析の主成分分析手法で成長性、収益性、安全性、規模の4つの分野で評価した。
対象会社は原則として2016年9月1日時点に上場している一般事業会社で、銀行、証券、保険、その他金融を除き、各新興市場を含む。決算期は2016年3月期までが対象。財務データは上場後の決算で直近3期平均(最低1期は必要)を使用。指標データなどで分母がマイナスになり計算ができない場合、その期は「計算不能」となる。
決算ベースについては、各期とも連結優先。ただし、連結開始や廃止などで連結と単独が混在する場合もある。また、変則決算がある場合は6カ月以上の決算期のみ使用。売上高、営業利益、経常利益、当期利益などのフロー項目は12カ月に調整した。
分析手法として使ったのは多変量解析の主成分分析。この手法は多数の変数を要約し、少数の情報で全体の特性を代表させることができる。財務データのような多数存在する項目を少ない情報に集約でき、総合評価が可能になる。
主成分分析で求められた第1主成分得点を偏差値化し、異常値をならすために最大70、最小30に変換。さらに最高1000、最低500に調整して各分野の得点とした。4つの評価分野の各得点を合計したものが総合得点となっている(総合得点の最高は4000点)。
■ランキング算出に使用した財務指標
【成長性】売上高増減率、営業利益増減率、営業キャッシュフロー増減率、総資産増減率、利益剰余金増減率
【収益性】ROE(当期利益÷自己資本)、ROA(営業利益÷総資産) 、売上高営業利益率(営業利益÷売上高)、売上高当期利益率(当期利益÷売上高)、営業キャッシュフロー
【安全性】流動比率(流動資産÷流動負債)、D/Eレシオ(有利子負債÷自己資本)、固定比率(固定資産÷自己資本)、総資産利益剰余金比率(利益剰余金÷総資産)、利益剰余金
【規模】売上高 、EBITDA(税引き前利益+支払利息+減価償却費)、当期利益、総資産、有利子負債
注)EBITDAの支払利息と減価償却費はキャッシュフロー計算書掲載の数字を使用
岸本 吉浩 東洋経済 記者

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きしもと よしひろ / Yoshihiro Kishimoto

1996年東洋経済新報社入社。以来各種企業調査にかかわる。『CSR企業総覧』編集長として、CSR調査、各種企業評価を長年担当。著書に『指標とランキングでわかる! 本当のホワイト企業の見つけ方』など。2023年4月から編集局記者、編集委員、『本当に強い大学』2023年版編集長。

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