昭和少年のバイブル「鉄道大百科」誕生秘話 「ケイブンシャ」名編集長との出会いが決め手

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酒井さんが示した提示額はやはり売れ行きが心配だったのか、今思えば「版売り切りの利益だけでこの企画はおしまい」、なんて気持ちだったのかもしれません。したがって著者ではなく私の名は監修という形で、印税方式ではなく買い取り方式で、売れても売れなくとも80万円を支払う、とのことでした。中村さんも私もそんなに売れるとは思っていませんのでこれで進めることにしました。

内容は営業からの強い要望でSLをメインに、電車やそのほかの鉄道もふんだんに入れる図鑑方式にしてほしいということでした。私は機関車だけにこだわりたかったのですが、営業からの要望は絶対なのでそれに従いました。結果的には、何でも詰め込んで子どもたちに情報を提供する、「小さくて分厚いカッコイイ本に情報がびっしり」という大百科シリーズのコンセプトが子どもたちに受けたのでしょう。こうして勁文社での鉄道大百科シリーズ第1号『世界の鉄道 機関車・電車大百科』という、私にはミスマッチとも思えるタイトルでスタートしました。

編集方針は「何でも入れてくれ」

当時の編集部には鉄道に詳しい人は誰もいなくて、これまで手掛けた怪獣モノや特撮モノには詳しい「怪獣オタク」はいても「鉄道オタク」は皆無で、それで本の内容は、とにかく私に任せるから何でも入れてくれということでした。

まず、これまでの日本の蒸気機関車をすべて網羅することにしました。これまで私が撮ってきた蒸気機関車を中心に、古い機関車や資料は当時の「交通博物館」や国鉄本社の1階にあった「国鉄PRコーナー」などで写真を借りてきました。とにかく何でも入れてくれというので、当時あこがれだった、カッコいい海外の鉄道にまで及びました。

当時私はまだ海外取材経験はなかったので、友人の長谷川章さんや、各国の大使館などを回り資料収集と写真を集めました。当時の各国の大使館は快く自国の写真を貸してくれましたし、国鉄PRコーナーでは貴重な写真なども無料貸し出しのサービスをしていました。それに年に1度は「数字であらわす国鉄」という小冊子が無料配布されていて、これが私の貴重な資料となり、後日『鉄道もの知り大百科』の参考文献となったのです。

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