昭和少年のバイブル「鉄道大百科」誕生秘話

「ケイブンシャ」名編集長との出会いが決め手

分厚くて、カッコよかった大百科(写真:筆者提供)
昭和50年代、鉄道少年の手元には必ず「大百科」があった。この大百科シリーズの生みの親、南正時氏が、発刊に至るまでの秘話を明かす。

1974年の春に南九州での最後の蒸気機関車(SL)の取材に訪れました。その帰路、八代から乗車した581系「有明」の指定席に行くと、私の隣のB席に、私よりは一回りも大きい恰幅の良い人がすでに座っていました。581系の昼の座席はご存じのように4席向かい合わせの窮屈なもので「何もよりによってデブが……」なんて自分のデブを棚に上げて心の中で思ったものでした。

出会いのきっかけは「中一時代」

すると隣の男がなれなれしくも、私のカメラバッグを見て「何を撮られているのですか」と話しかけてきました。私は少しご機嫌斜めながらも「ええ、蒸気機関車を撮りに来ました」と答えると、やおら内ポケットから名刺を取り出し「こういう者です。こんど昼メシでも食べにいらっしゃいませんか?」とさらになれなれしく言いました。

名刺には「旺文社『中一時代』副編集長 中村……」とありました。私の態度が豹変したのは、言うまでもありません。あまり邪険にしなくてよかったと反省しきりでした。

後日、帰京してから数日後に旺文社の中村さんをお訪ねしました。そのとき中村さんから「ウチの雑誌のモノクログラビアに蒸気機関車を掲載しないか」というお話をいただきました。『中一時代』といえば私の愛読書だったわけですから、まさかその本に私の写真が……と大感激したのを今でもはっきり覚えています。『中一時代』の巻頭のモノクログラビアに私の蒸気機関車の写真が掲載されたのはそれから2カ月後のことです。

今だから言えますが当時中村さんは出版界に親交が深く、いろいろな部署の編集者との付き合いがあったようで、ある日水道橋で飲んでいるときに「南さんに会わせたい人がいるんだけど」ということでした。後日、中村さんと共に、会わせたいという編集者の元を訪れました。西新宿の小さな雑居ビルの2階の小さな出版社「勁文社」(ケイブンシャ)でした。

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