市場は安定も、危機国の経済的疲弊は深刻化 景気・経済観測(欧州)
折しもECBのドラギ総裁は7月4日の政策理事会で、政策変更を事前に約束しないとの従来の方針を転換。「主要政策金利を長期間にわたり現行水準もしくはそれを下回る水準に維持する」ことを約束し、将来の金融政策への指針(フォワード・ガイダンス)を導入した。
ドラギ総裁の市場との対話能力を高く評価する声が多かったが、ECBが実際に導入可能な政策手段は限られているとの見方が大半だった。OMTやドラギ総裁への過大な信任も、いずれかの時点で試されるとの意見も数多く聞かれた。
追加の金融緩和をメインシナリオに据える声は皆無だったが、今後も景気停滞が予想以上に続いた場合、①主要政策金利の25bps利下げ(下限の預金金利はゼロに維持)、②フォワード・ガイダンスの強化(低金利を維持する期間を明示したり、低金利を解除する目安となる参照値を設定するなど)、③長期リファイナンスオペ(LTRO)の強化・再実施(オペ期間の長期化や固定金利型のオペ導入など)――に追い込まれると市場関係者の多くは見ている。
一方で、マイナスの預金金利については、期待される政策効果に比べて、予期せぬ副作用が生じた場合のリスクが大きいことから、実施は見送られるとの意見が多数を占めた。資産担保証券(ABS)を活用した中小企業の資金調達支援策については、ECBが主体的な役割を担うわけではないうえ、景気浮揚の即効薬にはならないとの見方が支配的だった。
市場安定の影で危機国の経済疲弊は続く
金融関係者の多くは、新興国からの資金引き揚げなどをきっかけに市場環境が不安定化すれば、危機国での政治的な緊張や経済状況の悪化が、再び市場の動揺につながりやすい局面が訪れることを警戒していた。ただ、ドラギ総裁がもたらした市場の安定によって、かつてのような市場に激震をもたらす危機の局面が再燃するとは見ていないようだ。
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