市場は安定も、危機国の経済的疲弊は深刻化 景気・経済観測(欧州)
ポルトガルでは主要閣僚の辞任をきっかけとした連立崩壊の危機はひとまず回避されたが、議会の解散権を持つカバコシルバ大統領が連立政権の内閣改造案に難色を示し、政治の混迷が深まっている。大統領は連立を組む「社会民主党(PSD)」と「民衆党(CDS-PP)」に最大野党の「社会党(PS)」を加えた主要政党による挙国一致内閣の成立と、支援プログラム終了後の議会の早期解散・総選挙の実施を提案した。だが、野党勢は現政権への内閣不信任投票を求めており、事態は引き続き流動的だ。
イタリアではベルルスコーニ元首相が実権を握るメディア企業の脱税疑惑をめぐる控訴審が7月末に予定されており、5月の高裁判決に添って禁固刑(有罪の場合も高齢を理由に自宅勾留となることが有力視されている)と公職追放が言い渡された場合、元首相が率いる「自由の人民(PDL)」が、4月末に発足したレッタ政権への支持を取り下げるとの見方も一部にある。ひとまず6月の徴収見送りを決めた不動産税や7月1日の引き上げを延期した付加価値税(VAT)増税をめぐっても、今後連立内部での対立が激化する懸念がある。
スペインではラホイ首相が率いる「国民党(PP)」の不正献金疑惑が再びメディアをにぎわせている。元会計責任者への検察当局の取り調べが進む中、新たに党の関与を示唆する資料を一部のマスコミが報道した。国民党は疑惑を否定しているが、最大野党の「社会労働党(PSOE)」がラホイ首相の辞職を求めるなど、緊張が増している。
景気動向も決して楽観できない
景気動向を懸念する声も根強い。マインド指標を中心に一部の経済指標に景気底入れや安定化の兆しもみられるが、危機国を中心に失業率の上昇や銀行の貸し出し抑制姿勢の継続が続いており、景気浮揚の牽引役は見当たらない。
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