「道の駅」来場55万人!新幹線で変わる木古内 人口減少や高齢化が進む地域の可能性

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まちあるきガイドの活動について語る藤谷さん(筆者撮影)

ほぼ1年ぶりにお目にかかった藤谷晃章事務局長は、少し若返ったように見えた。話し込むうち、その理由が分かった。

「新幹線開業から86回、まちあるきガイドに出動しました。土日はほとんどつぶれて、本当に休む暇がない。しかし、楽しいんですよ、いろいろな出会いがあって。役場勤務時代の自分から、スイッチを自分で切り替えた」

2015年3月に町役場を定年退職後、希望して観光協会入りした。間もなく、町商工会に間借りしていた事務局が独立し、初の“専従体制”で、藤谷さんは町の観光施策を担う立場になった。あいさつ一つをとっても、「書面を読む」のが当たり前だった生活と打って変わって、連日、初対面の人に町の味わい方を伝える経験は、苦しくも充実した日々だったようだ。

「相手が地元の人じゃないから、かえってリラックスして話せた面もあり、だんだん度胸が付いてきた。最近初めて、インバウンドの人と話す機会があってすごく緊張しましたよ。中国人女性だった。何とか片言の英語が通じたので、食事の場所を紹介して…。いつの間にか、ラジオの生中継でも緊張せず話せるようになりました」

もっと若手が出てこないと…

同期の人々がリタイアし、ゆったりした日常に浸る中、藤谷さんは対照的に、役場時代よりも意識がアグレッシブになったようだ。「誰とのどんな出会いをビジネスチャンスに変えるか、毎日それを考えています」。以前なら何となく聞いていたラジオも、今は「どんな情報でも、きっと何かの会話の糸口になる」と聞き耳を立てる。そして、観光客の生の声は、時にヒントをもたらしてくれる。

例えば、「どうなんde’s」のオープン時も、小さな町でのイタリアン・レストランへの挑戦には懐疑的な声があったという。

「ところがね、まちあるきで案内した観光客が『イタリアンは正解だったんじゃないか』と。道南を訪れる人はおおむね、海鮮が目当てだけれど、そればかりでは飽きる。函館市内でたっぷり海鮮を食べた後、ちょうど木古内でイタリアンを口にできてうれしかった、というんですね」

町の資料によると、町が設定している「木古内みそぎまち歩き」の利用実績は、2015年度が270人。新幹線開業を迎えた2016年度は、今回の調査時点で485人に跳ね上がった。その多くに藤谷さんが対応しているという。裏返せば、藤谷さん1人に何かアクシデントがあっただけで、観光客への対応が回らなくなる状態だ。

「町のイベントを支えてきた人たちがどんどん高齢化し、携われる人が少なくなってきた。その分、こちらがカバーすることになり、さまざまな体験ができる点は収穫が大きいけれど、観光協会ではこの私が最年少の状態。もっともっと若手が出てこないと…」

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