「道の駅」来場55万人!新幹線で変わる木古内 人口減少や高齢化が進む地域の可能性

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館内ではちょうど、大森伊佐緒町長が在京テレビ局の取材に応じ、売り場やレストランの特色を紹介していて、ごあいさつすることができた。「この塩パンは行列ができることが珍しくないんです」と指さす先を見ると、「総菜パン・コッペん道土」の看板が。地元名産の「みそぎの塩」を使った「塩パン」や地元の食材を使ったコッペパンの専門店だ。2016年12月には、アンテナショップが横浜市青葉区に出店したという。新幹線開業に合わせて、首都圏などの店舗が開業地の駅ビルに出店する例は多いが、逆に開業地の店舗が大都市圏へ進出する例は、あまり聞いたことがない。

道の駅きこないで青森リンゴのブースの写真を撮影する浅見さん(筆者撮影)

フロアの一角を、青森市在住の筆者には見慣れた「リンゴの山」が占めていた。オープン1周年記念イベント「寒中みそぎの郷まつり」の一環として、青森・岩手・宮城3県の特産品を集めた「東北物産フェア」が開かれていた。道南の海産物と青森リンゴ、盛岡冷麺、仙台の牛タンが並ぶ光景に、木古内町がコンパクトながら、東北と北海道の結節点として機能し始めている印象があらためて強まった。

レストランは道南と東北の交流の証

道の駅の飲食機能を支えるレストラン「どうなんde’s」で、ランチを食べながらメールチェックや返信を済ませた。実はこのレストランそのものが、明治にさかのぼる道南と東北の交流の産物だ。

明治維新後、山形県鶴岡市から多くの人が開拓民として木古内町に移り住み、町内にはかつて「鶴岡小学校」という名の学校もあった。二つのまちは姉妹都市として長く交わり、2016年3月の北海道新幹線開業時には、鶴岡市の人々が祝福に駆けつけた。

「どうなんde’s」のシェフ・飯田晃久氏は、そば店経営者から転じて、「庄内イタリアン」を掲げる鶴岡市のレストラン「アル・ケッチァーノ」で修行した。オーナーは日本を代表するシェフの一人・奥田政行氏。「どうなんde’s」の監修にも当たり、店名には「OcudaSpirits」(オクダ・スピリッツ)の名を冠している。食事後、オープン1周年に合わせて木古内入りしていた奥田氏にもごあいさつができた。

道の駅の喧噪を離れて、新幹線木古内駅に隣接する道南いさりび鉄道・木古内駅の待合室に向かった。以前から調査にご協力いただいている町観光協会の事務局が12月、市街地からここへ移転したと聞いていたからだ。駅が無人となり、売店もなくなって、一時は閑散としていた構内は、様相が一変していた。蒸気機関車の模型や、ホームにあったJR時代の駅名標が展示され、売店跡に観光協会の看板が掛かっていた。

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