「道の駅」来場55万人!新幹線で変わる木古内 人口減少や高齢化が進む地域の可能性

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町には誘致企業の優遇策について明確な基準がなかったが、ホテル誘致も視野に、駅前に町有地を確保するとともに、企業振興促進条例を全部改正した。新函館北斗駅前にオープンするホテルの稼働率が上がるようなら、木古内駅前も可能性が開ける…と動向を注視している。

木古内駅前に町が確保した「ちょっと暮らし住宅」(筆者撮影)

一方で、移住や来訪を促すため、駅から徒歩約10分の場所にあった築45年の空き家を買い上げ、「ちょっと暮らし住宅」としてリフォームした。物件を探していたところ、ちょうど単身の高齢者が家を手放そうとしていることが分かり、好適な立地と間取りの家を調えられた。1週間から1カ月の滞在と、光熱水費の自己負担などを条件に、2月に利用の募集を開始する。一連のノウハウは、取り組みが進んでいる知内町の事例が参考になったという。

町としての情報発信体制も一新する。町の職員一人ひとりがきめ細かく情報更新できるよう、4月に町ホームページをリニューアル予定だという。

人口減少社会のモデルを見いだせるか

木古内町や周辺地域は、人口規模が小さい上に、加速度的な人口減少と高齢化が進む。国内有数の観光都市・函館に比べれば、インバウンド対策や宿泊施設整備など、手が回っていなかった点も少なくない。しかし、見方を変えれば、伸びしろが大きく、労力対効果が大きい可能性もある。小規模自治体ならではの機動力を生かし、また、近隣9町が観光や産業面のノウハウを共有し合えば、「人口減少・高齢社会」の新幹線活用について、新たなモデルが見えてくるかもしれない。

ホテルを主体とする商業施設が姿を現した新函館北斗駅前(筆者撮影)

調査の途中、立ち寄った新函館北斗駅では、丹野室長が注目する、ホテルを主体とする商業施設が全容を現していた。そして、十数人の白人観光客が、約150キロメートル離れたニセコ町からやってきた送迎バスに乗り込む光景を目にした。北海道新幹線が、道南に大きな変化をもたらしつつあることを実感した。その実態は春以降、数字などの形で明らかになっていくだろう。

櫛引 素夫 青森大学教授、地域ジャーナリスト、専門地域調査士

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くしびき もとお / Motoo Kushibiki

1962年青森市生まれ。東奥日報記者を経て2013年より現職。東北大学大学院理学研究科、弘前大学大学院地域社会研究科修了。整備新幹線をテーマに研究活動を行う。

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