「メキシコ国境に壁」はどれだけ現実的なのか 2兆3000億円の壁は米経済を疲弊させる

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関税以外の案はどうか? トランプが早い時期から語っていたのが送金についてだ。メキシコは、国外の就労者からの送金額が年間約250億ドル(約2兆9000億円)に上り、その大半は米国からだ。主にウエスタンユニオンやマネーグラムなどの送金サービス会社を介して行われる。

トランプは当初、単純に送金を禁止するとだけ述べ、法的権利などはあいまいだった。だがその後、彼はより磨かれた戦略を打ち出した。反テロ法、いわゆる「愛国者法」の下、合法的な居住資格を持たない移民に対し国外送金を禁止するようルールを変えるというものだ。米国からの送金が途絶えるとなれば、メキシコ政府はすぐに降参し、壁の建設費を支払うだろうという考え方だ。

国外からの送金は確かにメキシコにとって重大だ。メキシコのエンリケ・ペニャニエト大統領は1月23日、外交政策に関する演説を行い、「米国に居住する同胞からの自由な送金」を保障することは、対米関係の再交渉における10の主要目標の1つだと述べている。

送金に対する障害を設けることは…

ただトランプは、人々は障壁ができても別の手段を見つけるということを見落としているようだ。米国に暮らすメキシコの人々は、母国の親や子供、きょうだいに毎週100ドル送金する別のルートを考えつくだろう。実際、米政府監査院(GAO)は昨年の報告書で、送金に対する障害を設けることは、「正規の金融システムから、摘発が困難な方法に移行させる」影響を及ぼすことが多々あるとしている。

送金を禁止するのではなく、送金に対して課税するという案もある。オクラホマ州は2010年に一時的にそれを試みたが、その結果わかったのは、人々は送金を別の非課税の方法に変えるということだった。

ピーターソン国際経済研究所のモニカ・デボーレが指摘しているように、課税することで送金が減少すると考えられ、そうなればメキシコ国内の消費だけでなく、米国の輸出にも打撃となるだろう。

さらに、送金への課税は違法の可能性がある。超党派の移民政策研究所のキャスリーン・ターナーは、対メキシコの送金にだけ課税することは、国籍による差別にあたる可能性があると言う。結局のところ、送金している人の多くは米国の市民か合法の居住者なのだ。不法移民による送金にだけ課税することは、控え目に言っても現実的ではない。

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