「メキシコ国境に壁」はどれだけ現実的なのか 2兆3000億円の壁は米経済を疲弊させる
ドナルド・トランプ米大統領は、メキシコとの国境に建てるという「巨大で美しい壁」の建設費をメキシコに支払わせることができるのだろうか? トランプは選挙戦中、メキシコから資金源を引き出すさまざまな方法を語ってきた。
1月26日に発表した最新の案は、メキシコからの輸入品に20%の関税を課すというものだ。米国の対メキシコ輸入総額は年間およそ3000億ドル(約35兆円)に上る。
トランプ大統領のその他の提案、たとえば国内の移民や企業によるメキシコへの送金を禁止する、メキシコ人に対して査証(ビザ)の申請手数料を引き上げるといった案と同じように、今回の関税案も明快なものだ。しかし、それを実現できるかどうかは別問題だ。
NAFTAとWTOのルールに違反する
まず、メキシコからの輸入品に20%の関税を課すことは、北米自由貿易協定(NAFTA)、そして世界貿易機関(WTO)のルールに違反することになる。WTOは、特定の国からの輸出品に報復関税を課すことを原則として認めていない。
トランプはWTOからの撤退の可能性についても言及している。だがそれは、メキシコに200億ドル(約2兆3000億円)ともいわれる壁の建設費を負担させるためだけにしては極端すぎる。米国と世界経済にとって莫大な代償を生むこととなり、各国入り乱れた貿易戦争を招きかねない。
しかし、それでもトランプがメキシコへの報復関税を実行したら、20%の関税を支払うのはメキシコ国民ではなく、米国の消費者だ。フォードモーターの中型セダン「フュージョン」の2017年モデルはメキシコのエルモシージョで生産されており、20%の関税によって米国での価格は2万2610ドル(約260万円)だったのが2万7132ドル(約310万円)になる。