鉄道写真家の「危機管理術」は何がスゴいのか プロは、事前準備を慎重に時間を掛けて行う

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雪中撮影で一番気をつけたいのは自身の身の安全。降雪中や低温化の撮影は無理をすれば命の危険もある。体調管理はもちろん、そこに至るまで体力を消耗しない万全の準備が必須だ。さらに、万が一に備えて携帯電話の電波やバッテリー残量にも注意を配る。

降雪時は列車のダイヤが乱れることも多い。いつやってくるかもわからないまま外で寒さに震えながら列車を待つというのは、苦行以外の何物もないので、運行情報の確認も大事になってくる。最近では列車の位置をリアルタイムで示してくれるアプリやサービスが広がってきており、ダイヤが乱れている時でも撮影効率が非常に向上した。

こうして撮影したデータは自宅、もしくは長期のロケであればポータブルのハードディスクに保存してバックアップしているのだが、ロケ先では最近、ハードディスクのように回転部品がなく、携行時の物理的衝撃や速度面でも大きなメリットがあるポータブルSSDを使用している。自宅はもちろん、ロケ先でもデータを保護する目的で必ず2つ以上のメディアに保存している。

就寝前にやることは?

北海道の吹雪の中、一瞬のシャッターチャンスを待つ筆者(撮影:長根広和)

ハードディスクの中には自動的に2つのハードディスクに同一データを書き込んでくれるRAIDタイプのものもあるが、個人的にはこのRAID自体のプログラムがエラーを起こし、コピーミスが起きた経験から手動で2つのハードディスクにバックアップを行っている。

ここまで挙げてきた危機管理はいかにも仕事を無事に遂行するための話であるが、最後にもっと身近な危機管理を紹介したい。「明日は撮影だから電池を充電しておこう」と充電器をセットして床に就く方も多いと思うが、気を付けたいのは目覚めた翌朝だ。充電をしていたのを忘れてカメラバッグだけ持って出かけて現地で青くなるという経験談は私の周囲でも少なくない。

ほかにも画像を記録するメディアをパソコンに挿したまま忘れてきたというトラブルも多い。そこで私は電池を充電したまま寝る場合は、外出に必要な財布や鍵を充電器の脇に置いてから寝ている。そうすれば翌朝起きたとき、否応なしに充電器が目に入るので忘れることはない。

記録メディアに関してはメインのメディアケースだけでなく、カメラバッグの中に1日分くらいのメディアを別にして入れっぱなしにしている。メディアをカメラに入れっぱなしにしておくのも有効だが、持って行くカメラを入れ替えた際にメディアを入れ替えることを失念する可能性があるので私はバッグのほうに入れている。

このように書くとあまりにも簡単すぎて笑われてしまうかもしれないが、こんなささいなことも、プロとして失敗しないためには、必要な危機管理なのである。

村上 悠太 鉄道写真家

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むらかみ ゆうた / Yuta Murakami

1987年東京都生まれ。高校時代には「写真甲子園」に出場。交通新聞社『鉄道ダイヤ情報』にて「突撃!ユータアニキ 鉄道HERO完全密着」連載中。撮影の講師や講演を多数行う。

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