鉄道写真家の「危機管理術」は何がスゴいのか プロは、事前準備を慎重に時間を掛けて行う

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そのようなことを考えると、複数の予報サイトを渡り歩いてもすべての時間帯で「晴れ」となるくらいの日であれば、望むような富士山が姿を現してくれることが多いと予測できる。逆に、晴れ予報が出ていても、日中だけ晴れる、といった予報だと、写真的には雲が多すぎて曇りという天気になることも多い。仕事で締め切りなどに余裕がないようなケースではその一瞬のチャンスに望みをかけざるをえないこともあるが、可能であれば撮影を延期するか、代替撮影地への移動を考慮している。

さて現地に到着してからも富士山の場合は慌ただしい。到着時にはきれいに見えていても、昼に向かうにつれ気温が上昇し、雲が湧く可能性があるからだ。また、この撮影地は超高速で走る新幹線を真横から撮影するため、ちょうどよいシャッターチャンスを逃してしまう可能性もある。

早めに現地に到着して準備を万全に

大雪の中を走る特急列車(筆者撮影)

加えて現在、東海道新幹線にはN700系(N700A含む)、700系の2種類の列車が活躍しているが、やはり狙いたいのは主力のN700系。その中でも、車体横のロゴマークのAの文字が大きいN700Aがやはり商業ベースの写真としては需要が高い。

さらに細かい話をすると東海道新幹線の車両にはJR東海所有の車両と山陽新幹線を受け持つJR西日本所有の車両が存在する。真横から見ると、車体に取り付けられている小さなJRマークの色や所属を区別する記号が両者で異なっている。写真にはマークの色や記号が明確に写り込むため、その車両の所属がわかる。この富士山の撮影地は東海道新幹線の区間なので、やはりJR東海のN700Aのほうが使用するクライアントとしても望ましいケースがほとんどだ。

さらにいうと、富士山の形状のバランスから新大阪方面に向かう(左に向かう)列車を撮影したい。そうなると、東海道新幹線が数分ごとに来るといっても、決してチャンスは多くないのだ。

そのため、現地にはなるべく早めに到着し、準備を万全にして待つという行為が重要になってくる。富士山の場合、いたるところにライブカメラがあり、こちらもリアルタイムで状況がわかるので、撮影地に向かううえの最終確認にも重宝している。

さて、ここまでは晴天時の撮影の話だが、悪天候時ももちろん撮影は行う。特に冬は雪の中を走る鉄道を狙うことも多いが、雪中撮影こそ危機管理の連続である。

作例2は大雪の中を走る北海道の特急列車を撮影した一枚だが、この日は当初、北海道の雄大な風景の中を列車が走っているという絵を撮影する予定でいた。ところが天気予報よりも降雪が強く、見通しがきかない時間が長い。そこであてもない降雪が止むチャンスを待つより、当初の狙いを変えて列車を大きめに撮影することにした。

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