快走続けるエービーシー・マート ”転身”で靴業界2位に急浮上

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快走続けるエービーシー・マート ”転身”で靴業界2位に急浮上

再編淘汰の波が押し寄せる靴業界で、ABCマートは積極出店を軸に快走を続けている。急成長の源泉となったのは潔い転身。アパレルや卸業を切り捨て、一気に靴小売り業界2位に浮上した。

靴業界に再編淘汰の波が押し寄せている。4月に老舗の卸売り大手「トークツ」が88億円の負債を抱えて倒産。5月には業界5位のツルヤ靴店と4位のニューステップの合併が決まった。

だが、業界2位のエービーシー(ABC)・マートの2008年2月期は、新規66出店に加え既存店も好調。営業利益は前期比11・7%の大幅増益を達成した。今期も65店の積極出店を軸に2ケタ増益が見込まれる。同業各社が伸び悩むなか、なぜABCマートだけが成長路線を快走できるのか。

ABCマートの”履歴書”はバラエティに富む。創業者で前会長の三木正浩氏が1980年代に始めた「アパレルと靴の卸売り」が原点だ。当時、小売店は展開しておらず、欧米で買い付けた若者向け商品を納入していた。

86年、三木氏が買い付けに訪れたロンドンの街中で目にした靴が会社の方向性を大きく変える。ブーツの「HAWKINS(ホーキンス)」。今やABCマートの収益柱となったブランドとの出合いだった。店で商品を確認し、その足で英ホーキンス社に向かった三木氏は、飛び込みで担当者と直談判。その熱意が通じて日本での代理店契約にこぎ着けた。

当時、米国やフランスなど、海外の靴ブランドは生産拠点を中国などアジア地域にシフトし始めており、三木氏は「日本で販売できれば、もっと安い値段で利益を出せる」と考えていた。低価格を実現するために、調達ルートを自前で開拓。韓国や中国などを渡り歩き、条件に合う工場を探し出した。調達面に関するリスクをすべて負うことで、中間業者に支払う余分なマージンの削減に成功した。

靴流通の近代化が遅れ、価格が下がらなかった日本で、低価格路線のホーキンスは大ヒット。その後も本家が生産を停止していたアウトドア分野を復興させるなど、企画面から日本発の提案を増やし、存在感を高めていった。

宣伝効果で認知度向上

95年に「HAWKINS」の商標権を完全取得。知名度をさらに高めるべく、業界では珍しく、木村拓哉などの有名人を起用して大胆な広告宣伝を展開した。当時は200億円の売り上げ規模ながら、現在とほぼ同水準の40億円超の販促費を投入。認知度は急速に高まった。

一方、この時期にアパレルをバッサリ切り捨てた。数店出店していた小売店舗は、アパレルのついでに靴を販売しており、売り上げもアパレルが半分以上を占めていた。だが、ABCマートは迷わず靴に集中する。カリフォルニア生まれの「VANS」の代理店契約も取得し、二つの自社ブランド靴を中心に拡大路線を歩み出すことになった。

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