快走続けるエービーシー・マート ”転身”で靴業界2位に急浮上


 業績は順調に伸びる一方、厚い壁が立ちはだかっていた。靴屋が古い体質から抜け出せないのだ。テレビCM放映に合わせた拡販を提案しても、他社との付き合いや、仕入れ枠の確保を理由に売り込みに積極的ではない店が多かった。時にスニーカーブームも終焉を迎え、靴屋の廃業が増加。「このままでは業界に未来はない」。そんな危機感を募らせていった。

積極出店でシェア拡大

突然の決断だった。ジャスダック上場から1年後の2002年に卸業から小売りへの業態転換を宣言。この転身は驚きをもって迎えられた。それもそのはず、当時の営業利益率は約30%。「儲かる卸売りをなぜやめるのか」、「うまくいくわけがない」それが業界や市場関係者の見方だった。だが、そうした周囲の雑音を振り払うように、ABCマートは首都圏を中心に年間50店舗近い積極出店で業界シェアを一気に広げていった。

急成長を支えたのは自社ブランドの強みやメーカーとの直接取引に加え、素早い商品展開だ。たとえば、社内のデザイナーは商品の生産管理まで担当する。海外の展示会に出掛けると、目をつけた商品を手に取るやメーカーに出向き、数日で商談を済ませて帰国することもある。個人に発注の権限まで認められているため、迅速な買い付けが可能。卸売り時代のノウハウが生かされているのだ。

それだけではない。商品を売り込む仕組みも徹底している。他店より品ぞろえを6~7割程度に抑え、逆に一つの商品の数を多く持つ。販促と連動し、集中して売り込むことで商品は短期間で入れ替わる。少なくなった在庫は一部の店舗に集中させるなど、新商品投入と在庫管理をうまく組み合わせ「売り場の鮮度」を保っていく。こうした取り組みはアパレル業界では当然のことだが、靴業界では珍しいという。

同社が長期的に目指すのは売上高2000億円の達成。1兆5000億円程度の業界で15%のシェア獲得が目標となる。年間60店ペースの積極出店を軸に規模拡大を進める。「手薄で知名度も低い関西が今後の重点地域」(小島穣取締役経営企画室長)という。商品面ではレディス向けの強化やスポーツウエア等の関連販売、オーダーメードなどで客層の拡大を図る。また、02年に進出した韓国子会社は知名度向上と資金調達のため現地での上場を検討中だ。

売り上げの過半を占めるアパレルを捨て、卸業から小売りへとドラスチックに転身を遂げたABCマート。ライバル不在の急成長はしばらく続きそうだ。

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(田邉佳介 =オール投資)

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