中国共産党政権は、2~3年以内に崩壊も 異色のエコノミスト・増田悦佐氏に聞く(下)

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大衆運動の盛り上がりなど何かのきっかけさえあれば、現政権は非常にあっさり内部崩壊する可能性が高い。内部崩壊の始まりは、中国共産党中央委員会メンバーが、続々と海外に逃亡することだ。すでに、その兆候があちこちに見られる。たとえば、中国共産党高級幹部で、少なくとも家族の一人が海外に生活拠点を持っている人の比率は9割を超え、また、海外への不正送金はこの10年間で莫大な金額に達している。

政権崩壊については、内戦など中国社会の大混乱を招き、「世界中に難民があふれ出す」と言って、諸外国を脅かす共産党幹部もいる。しかし、そうはならないだろう。私は、中国文明の三大特徴は、「科挙」および「宦官(かんがん)」「纏足(てんそく)」というグロテスクな慣習であり、それが大きな弊害をもたらしてきたと思っている。

科挙の制度によって、中国では千年以上、最高の知的水準を誇る頭脳明晰な人間しか高級官僚にはなれない伝統が確立されている。彼らは全知全能を振り絞って延命策を続けるし、世襲ではないので、自分の代だけですさまじい金額の蓄財に励む。ただ、反面、先が見えすぎるので、政権が危機に瀕したときには、あっさりと権力を放棄して安全地帯に逃げ込む。中国の歴史を見ても、宋朝以降、元、明、清と、各政権の末期では、あっさりと崩れ去ってきた。

政権交代によって、実質的に国民一人に一票が与えられる民主的な社会になるだろう。また、北京語、上海語といった言語圏ごとに独立した国家になるかもしれない。政権交代によって、労働者の生活は、現状よりよくなるはずだ。だから、世界中に難民があふれ出すようなことはないと見ている。

柿沼 茂喜 東洋経済 記者

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かきぬま しげき / Shigeki Kakinuma

入社以来、一貫して記者として食品・外食、金融・証券、電力・ガス・石油、流通、精密機器、総合電機、造船・重機などの業界を担当。この間、『週刊東洋経済』『会社四季報』『金融ビジネス』の各副編集長、『株式ウイークリー』編集長、編集局次長などを経て現職。

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