地方は儲からない「イベント地獄」で疲弊する 現場がボロボロになる3つの「危険な罠」とは

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課題もメンバーもタイミングも異なるほかの地域でパクっても、成果を再現できるものではないのです。一過性のはやり廃りでパクリ事業を増加させるトップのいる地域もまた衰退していきます。

危険信号3 :「無駄な数値目標」のために、やることを増やす

最近では、活性化事業の計画に数値目標が設定されることが当たり前になりました。たとえば「年間で前年比数千人の”観光客”を増加させる」。一見、とてもよさそうですが、無駄な計画を立てて、自分たちの首をしめることもあるのです。

どういうことでしょうか。たとえば、インバウンド需要でも重要なのは、人数ではなく「消費総額」です。しかし、計画で数千人の観光客と目標を掲げてしまえば、人数を達成しなくてはならなくなります。そうなると、今度はイベントやらモニター募集をやったり、イベント会場を通過した地元の人さえも「日帰り観光客」とするなど、数値目標を無理やり達成しようとします。

本来は人が商品やサービスを使って地域に「経済」が発生することが活性化のはずなのですが、それは二の次になる。トップが定めた「誤った数値目標」に縛られて、予算を使い、人手を食いつぶす。こうした、非効率で活性化効果の薄い「やること」を増加させる地域も、当然衰退していきます。

「やめること」を決めることから、始めよう

地域におけるトップの仕事として重要なのは、限られた資源を有効活用するために優先順をつけること、そして優先順位の低いものについては「やめる決断をすること」です。何かを始めることは比較的簡単で、これはトップでなくとも起案できます。しかし、過去に組織的にやってきたことをやめる、という決断はトップにしかできないことです。

新たなことを始めるためには少なくとも2~3つのことはやめ、資源の余裕を作らなくてはなりません。人手が変わらないまま、やることばかりを増加させるのは、トップとして何の意思決定もしていないのと同義です。

年初や来年度に向け、まずは「今まで取り組んできたことの中で、やめること」について意思決定してほしいのです。やめることができるからこそ、新しいことが始められる。実は、この順番を間違わない地域こそ、適切に成果を挙げているのです。

木下 斉 まちビジネス事業家

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きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年生まれ。高校在学時からまちづくり事業に取り組み、2000年に全国商店街による共同出資会社を設立、同年「IT革命」で新語流行語大賞を受賞。

早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。

2008年に設立した熊本城東マネジメント株式会社をはじめ全国各地のまちづくり会社役員を兼務し、2009年には全国各地の事業型まちづくり組織の連携と政策提言を行うために一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立。2015年から都市経営プロフェッショナルスクールを設立し、既に550名を超える卒業生を輩出。2020年には北海道の新時代に向けた「えぞ財団」を仲間と共に発足している。また内閣府地域活性化伝道師等の政府アドバイザーも務める。

著書に『まちづくり幻想』『稼ぐまちが地方を変える』『凡人のための地域再生入門』『地方創生大全』等多数。

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