市場を沸かせた「トランプ熱」は冷めつつある 発言は一貫性を欠き、政策の実行に疑問符

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 1月19日、1カ月前、米国株とドルは、財政支出拡大や規制緩和などトランプ次期米大統領(写真)の掲げる政策への期待感から大幅に上昇していた。しかし新政権がこうした政策を実際にどの程度実行に移せるのか疑問が強まっている。ワシントンで撮影(2017年 ロイター/Jonathan Ernst)

[ニューヨーク 19日 ロイター] - 1カ月前、米国株とドルは、財政支出拡大や規制緩和などトランプ次期米大統領の掲げる政策への期待感から大幅に上昇していた。しかし新政権がこうした政策を実際にどの程度実行に移せるのか疑問が強まっている上に、トランプ氏の発言は一貫性を欠いており、投資家はトランプ氏が大統領就任後に本当に改革者になり得るのか危ぶみ始めている。

米株式市場は、昨年11月のトランプ氏の大統領選勝利から数週間、浮かれた状態となった。S&P総合500種は何度も史上最高値を更新し、約6%上がった。政府借り入れが増えてインフレが高まるとの警戒感から長期金利は2年超ぶりの水準に上昇。ドルは他の主要通貨に対して14年ぶりの高値をつけ、安全資産とされる金は10年ぶりの安値に沈んだ。

しかし投資家は足元では現実に立ち返りつつあり、金融市場にもこうした投資家の姿勢の変化が表れている。

BM0プライベート・バンクのジャック・アブリン最高投資責任者(CIO)は、大統領就任式が近づいて政策の実行性が問われていると指摘。S&Pは20%程度割高だとみる。

米国株とドルは既に買われるだけ買われた状態で、投資家の中には強気のポジションを圧縮する動きもみられる。一方で債券や金には資金が回帰している。

ウエスタン・アセット・マネジメントのポートフォリオ・マネジャーのアミット・ショプラ氏は「トランプ氏の政策が短期および長期で成長やインフレに与える影響を分析することで政策による基礎的諸条件の変動を予測し、ポートフォリオを調整した」と述べた。

強気相場は終焉を迎えたとだれもが考えているわけではない。QMAのポートフォリオマネジャー、エド・キャンベル氏は「(経済成長と物価上昇に期待する)リフレ取引は大転換を迎えたわけではなく、小休止にすぎない」と述べた。

米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、ヘッジファンドなど投機筋の米国債と金利先物の売り越しは先週、過去最高を記録。物価が上昇し、米連邦準備理事会(FRB)が追加利上げに踏み切るとの見方が揺らいでいないことが浮き彫りになった。

ただ、ダウ工業株30種平均が2万ドルの大台を目前に足踏みし、ドルは下落している。こうした市場の動きは税制改革やインフラ投資、規制緩和などトランプ氏の掲げる政策の詳細が明らかになっていないことに投資家が不満を強めていることのあらわれ、とアナリストはみている。

パイオニア・インベストメンツの外為戦略ディレクターのパレシュ・ウパダヤ氏は「市場は既に好材料を大量に織り込んだ。今度はトランプ氏がすべての政策を実行することはできないと不安を強めている」と話す。

トランプ氏は経済に関する自身の考えを政策課題としてまとめることはなく、その場その場で政策目標と矛盾するコメントを手当り次第にまき散らし、投資家を混乱させている。最近では米紙ウォールストリート・ジャーナルのインタビューで、米国はドル高で「死にそうになっている」と発言。ドルが急落した。

(Richard Leong記者)

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