ただし、持ち帰り残業が上司の明確な指示に基づく場合は、労働時間に含まれます。そして、仮に上司が明確な指示や命令をしていなかったとしても、業務量が膨大で、客観的に判断して持ち帰り残業が必然と思われるような場合や、上司がその事実を把握しながら黙認しているような場合は、労働時間と判断される可能性が高まります。つまり、上司の指示の有無によらず、部下が持ち帰り残業をしている状況は、会社にとってリスクになりかねません。
「部下は残業NG」で、管理職の長時間労働が問題に
こうした状況を受けて問題となっているのが、管理職の長時間労働です。労働基準法上に定められた「管理監督者」は、労働時間・休日・休憩時間について労働基準法上の規定が適用されません。その結果、管理職が残業規制で仕事の終わらない部下の仕事を引き受け、長時間労働となっている実態も増えていると見られています。
現実に、2016年4月には関西電力高浜原発において、運転延長をめぐる対応に追われた40代の担当課長が自殺する事件が起きました。このケースの場合、1カ月の時間外労働が最大で200時間近くに及んでいたことから、2016年10月に労災認定されました。加えて、相当の持ち帰り残業をしていたと見られますが、正確な時間を確認するまでには至りませんでした。
この問題を受けて、敦賀労働基準監督署は関電社長を出頭させ、全管理職の労働時間を適切に把握するように求める指導票を交付しました。過去2年にさかのぼって、全管理職の労働時間や持ち帰り残業の実態を調べさせ、報告を求めさせるというのは、異例の対応と言えるでしょう。
今、多くの企業が「働き方改革」を行い、長時間労働の是正に取り組もうとしています。しかし、本質的な仕事のやり方を変えずに在社時間だけを強制的に減らしたところで、仕事が終わらなかった社員は場所を変えて作業を行う状況になりかねません。本当の意味での働き方改革が浸透し、労働生産性を高めていくことは、重要な経営課題であり、意識改革を含めた抜本的な見直しが迫られています。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら