30代から成長したい人が持つべき「3つの鏡」 僕が「貞観政要」を座右の書にする理由

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僕は、前職の時代から、現在に至るまで、リーダーの最も重要な役目は、「スタッフにとって、元気で、明るく、楽しい職場をつくること」だと考えています。

僕がこう思うようになったのは、太宗の教えに共感したからです。三鏡の話を読んでからは、部下の前ではできるだけ、不愉快な顔をしないことを心掛けています。僕が不愉快な顔をしていたら、部下も不愉快になる。だから職場にいる間は、たとえ二日酔いでしんどくても(笑)、ニコニコするように努めています。それがリーダーの最低限の務めです。

中国の古典は「現代の仕事」に活かせるか

『座右の書『貞観政要』――中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」』中国は唐代、2代皇帝・太宗による統治(貞観時代の政治)の要諦が凝縮された『貞観政要』。世界最古・最高のリーダー論として世界中で読み継がれている『貞観政要』を座右の書にし、現代における注目リーダーである出口治明氏が、初めて中国の古典を深く語る

前職で僕が課長職に就いていたとき、課の運営方針として、「元気に、明るく、楽しく」と紙に書いて、張り出したことがありました。

この張り紙を見たある役員から、「出口くん、これは何だ? こんな紙を張り出したら、キミの課は、元気がなく、明るくなく、楽しくないみたいだと思われないか?」と言われました。

僕は内心で、「アホなおっさんやな。元気で明るく楽しくすることが、ビジネスのすべてなのに」と思いながらも、抵抗するのは時間の浪費でもっとアホらしいと思ったので、言われるままに外したことがあります。

でも僕は、今でも、「元気に、明るく、楽しく」が仕事のすべてだと思っています。元気で明るく楽しいワクワクする職場こそが、イノベーションを生み出す前提条件です。組織として生産性を上げていこうと思ったら、「元気に、明るく、楽しく」以外に解はない。それが結論です。

当然のことですが、ライフネット生命の運営方針は、「元気に、明るく、楽しく」が基軸です。社長の岩瀬から、「『元気に、明るく、楽しく』だけでは甘いんじゃありませんか? 『時には厳しく』とか、付け加えなくていいんですか?」とツッコミを入れられたこともありましたが、付け加えなくていいのです。

社員が元気に、明るく、楽しく働いてくれなければ、僕がいくら立派なことを言っても、お客さまにいいサービスを提供できるはずがありません。

『貞観政要』に書かれた治世(マネジメント)の方法論は、普遍的です。

わが国でも、鎌倉時代には北条政子が、江戸時代には徳川家康が、そして明治時代には明治天皇が愛読したといわれていることからもわかるように、『貞観政要』の中には、時代を超えても変わらないリーダーシップのすべてが語られているのです。

『貞観政要』は、組織にかかわる多くの人にとって、現代でもまったく色あせることがない古典の必読書です。ぜひ、読んでいただき、みなさんにとって、「理想のリーダーとは何か」を考えるヒントにしていただくことを願ってやみません。

出口 治明 立命館アジア太平洋大学(APU)学長

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でぐち はるあき / Haruaki Deguchi

1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業後、日本生命保険相互会社入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2005年に同社を退職。2008年にライフネット生命を開業。2017年に代表取締役会長を退任後、2018年1月より現職。『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『人類5000年史Ⅰ』(ちくま新書)、『「全世界史」講義Ⅰ、Ⅱ』(新潮社)、『仕事に効く教養としての「世界史」Ⅰ、Ⅱ』(祥伝社)、『本の「使い方」1万冊を血肉にした方法』(角川oneテーマ)、『教養は児童書で学べ』(光文社新書)、『ゼロから学ぶ「日本史」講義Ⅰ』(文藝春秋)など著書多数。

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