北朝鮮への経済制裁が効かない本当の理由 制裁が目的化し、金正恩のダメージは少ない

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従来の経済制裁では、制裁本来の目的から外れ、北朝鮮で広がっている市場経済という力を弱める結果を招くという見方もある。

経済制裁では北朝鮮の核開発を抑制できず、逆に北朝鮮の変化を促しうる市場経済の拡大を抑制してしまうという、矛盾した効果が起こりうるだろう。北朝鮮の貿易拡大は国内の市場拡大と連携しており、国内の軽工業分野の生産正常化も市場とつながっている。ところが、制裁を強化すればするほど北朝鮮当局が市場を統制するようになり、住民たちが自由な経済活動を行うようになって生じた付加価値を、当局側が国家の経済部門へと強制的に回収しようとするだろう。

では、北朝鮮の核開発を中断させうる、効果的な対北制裁はないのか。対北制裁を行う目的は、北朝鮮が核開発を中断し、放棄させることにあるのは明白。ならばこの目標達成に注力すべきだ。それにはまず包括的な対北制裁を行う方法が挙げられる。これには中国とロシアの参加が絶対に必要で、両国が日米韓の行っているレベルの対北制裁を行うということだ。

中ロによる制裁参加が最も効果的

中ロが参加すれば、事実上、包括的な対北制裁に次ぐ制裁を行うことになる。しかし、この方法は現実性に劣るだろう。韓国はこれまで中国が対北制裁に積極的に参加するために多くの無理を重ねてきた。それにもかかわらず、中国は韓国の要求を受け入れていない。理由は中国の核心的利益に影響を与えるためだ。

中国の場合、北朝鮮と国境閉鎖をした際に生じる北朝鮮内の不安定化がすぐさま、自国の不安定につながることを憂慮している。仮に1500キロメートルもの中朝国境地域に米軍が駐屯するなら、中国の負担は莫大なものになり、特に脱北者の大量発生で中国の東北3省の不安定性を増幅させることになるのは避けたい。また、米国の対中政策が南シナ海(マラッカ海峡、南沙群島、西沙群島)、尖閣諸島、台湾および朝鮮半島などにつながる封鎖政策を強化している中、北朝鮮の封鎖問題は南シナ海などとの「トレード戦術」を駆使するカードとして考慮できる問題だ。

現状では海外駐在の北朝鮮外交官が脱北するケースが相次いでいる。これを北朝鮮外部から見ると、従来の経済制裁で北朝鮮による対外取引が把握され始めて、北朝鮮外交官が本国への上納や生活費調達などに支障をきたすようになったため、と見えるだろう。

ところが、北朝鮮内部から外交官の動きを見ると、また違いがある。実は北朝鮮内の市場は広がるばかり。特に金正恩政権になって「圃田担当制」と「企業責任管理制」を全面導入したことで、市場の拡散はより速いスピードで進んでいるのだ。前者は農業分野で、後者は工業分野で、労働者個人のインセンティブを高め、生産・収入増につなげようとする政策であり、すでに北朝鮮全国で実施されている。

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