EUにとって不幸なことに、米国のトランプ新大統領はロシアとの関係を改善するという。東西冷戦の終結で欧州とロシアの緊張関係は緩和したが、欧州はロシアとの関係が今でも最大の政治・安保問題だ。ロシアの力が強くなることは、それだけ欧州への脅威が増大することになる。
しかも、EUとロシアの境界に位置するウクライナの問題に対して、トランプ氏はさほど重要視しない発言を行っている。ロシアによるクリミアの併合にしても、ウクライナ東部のロシア系住民への援助にしても、未解決であるのにだ。クリミア併合を容認する姿勢さえ示したことがあるという。
シリア問題でも影響力弱まる欧州
さらにトランプ氏は、過激派組織ISとの戦いでも、ロシアと協力する方針を示している。そうなるとアサド政権にも協力することになる。これは本来、EUのみならず、米国にとっても忌むべきことだ。米国の新政権がそれでも方向転換を行うというならば、EUとしては止められないが、不愉快に思うだろう。
シリアにおいてIS対策にオバマ政権が十分な効果を上げられない間に、ロシアとトルコの影響力が増大し、2016年12月末には両国の主導によって、米欧抜きでシリア政府と反政府勢力の停戦が実現。シリアのアサド政権は存続することとなった。以前からアサド大統領の排除を目標としつつ、主導的な役割を担ってきた米国とEUの影響力が、少なくとも一時的に後退したことは明らかだ。
そんな中で見えてきた、トランプ氏のロシア重視、そして欧州軽視になりかねない姿勢は、EUと米国の間で亀裂を生む恐れがある。EUは難民・移民問題を抱え、統合に黄色信号がつきかけているが、外交には長けている。今後欧州が米国、ロシアとどう間合いを取るか、注目だ。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら