初公開、ジャパネット髙田明の「伝え方」7極意 引退までの1年間、社員に教え続けたこと
「すごいでしょ、これだけのものが入っているんですよ、皆さん、どう思います?」
電子辞書なら、こういう一言が加えられるかどうか。大画面テレビなら、ただ金額を言うのではなく、
「14万9800円を、・・・・・・、5万円、5万円も引いてですよ、9万9800円。10万円切るんですよ!」
と間を作りながら言えるかどうか。そこで、伝わり方は大きく変わります。
私が愛読している世阿弥は、『花鏡』の中で伝え方のポイントを「一調二機三声」という言葉で表現しています。
「一調二機三声」というのは、声を出すまでのステップです。声の張り、高さ、緩急といったものを、心と体の中で整えるのが第一段階。これが一調です。そして、声を出す「間」をとり、いつ出すかタイミングを推し量るのが次の段階の二機です。そして第三段階が声を発する三声。常にこの過程を踏む必要がある、と書き残しています。
古典芸術の能と比較するのは僭越かもしれませんが、これを読んだとき、私がやっていることと同じだと思いました。
値段をお伝えするとき、声の高さはどうするか、どんな間をとるか、声を出すにあたって自分で測っています。
日常生活でも同じですよ。例えば、親が子どもを叱ったり、諭したりするとき、言いたいことを矢継ぎ早にわーわー言っても、子どもには怒られているということしか、伝わりません。ちゃんと理由をわからせたいと思ったら、ゆっくり間を置きながら話す。1回でわからなければ繰り返して言う。伝わるまで言う。そんなものですよね。
何を、誰に伝えるかを絞りきる
極意その3:伝えたいことを絞る――最初の1分間が勝負
テレビショッピングでも、プレゼンテーションの場合でも、最初の1分間こそが勝負です。
ジャパネットでは、若い世代に人気のあったタブレットを、シニア層に提案しています。シニア層の皆さんには、タブレットは使いこなすのは難しいと思いこんでいる人が多いようでした。そこで、私は最初の1分間をこんなふうに使いました。
「皆さん、これ、音声だけで簡単にインターネットができるんです。ご年配の方も簡単にできるんですよ。しかも100円! でも、まだ電話しないでくださいね。これから詳しくご説明しましょう」
最初のワンフレーズで視聴者の、全部じゃありませんよ、シニア層の心をつかむ。そのことだけを考えました。シニア世代の多くはインターネットに興味はあるんです。でも難しいと考えている。それで、音声だけで簡単にインターネットができるという説明から入ったんです。
そして、タブレットの本体価格は100円(あるいはゼロ円)という料金も、最初に伝えてしまいました。もちろん、プロバイダーとの契約が必要ということは、ご納得いただけるまで説明しますが、それは後です。最初に関心がぐっと前のめりにならないと、見続けていただけないからです。
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