福岡「親不孝通り」の喫茶店が40年続く理由 カフェチェーンの激戦地で提供する「価値」
満さんによると、店は開店当時、「現代美術のギャラリーとしても、喫茶店業界としても最先端だった」という。
木の“宝箱”は、米国の人気ロックバンド「エアロスミス」が75年リリースしたアルバム「闇夜のヘヴィ・ロック(Toys in the Attic)」のレコードジャケットがヒントになった。元来、2人ともジャズ好きなのだが、満さんが学生から薦められたアルバムを聴いて決めた。「ジャケットも音楽もハイセンス。ビビッと来たね」。そして、ホールの丸テーブル。当時の福岡では珍しく、同業者がお忍びで視察に来ていた。
「なのに最近、一見の若い女性客から『すごく昭和ですね』って、何だか時代遅れみたいな感じで言われて。うちだけ時間が止まってるのかなあ」と満さん。律子さんは「それがよかったのかもしれない」と言う。
「居場所は変わっちゃいかんよね」
ギャラリーへの来場客の多くは、店で作家を囲んで感想を語り合ったり、展示方法の打ち合わせに加わったりしていた。そのネットワークが店を支えてきた。
「それぞれが自分の居場所にしてくれた。店の外はすごいスピードで移り変わったけど、居場所は変わっちゃいかんよね。まだまだ店は閉められん」
律子さんが入れるコーヒーの深い味もまた、変わらない。
福岡市は人口150万人を超え、都市化が進む。「貘」のような個人経営の店は数少なくなったが、探せばまだ残っている。店主と語りながらカウンターで静かに飲むコーヒーは、世事を忘れさせてくれる至福の一杯だ。
(文:木村貴之)
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